ラジオ『ハライチのターン!』が面白い。面白すぎて逆に辛い
もしもあなたがまだ『ハライチのターン!』を聞いたことがないのなら、私はあなたがうらやましい。
できることなら『ハライチのターン!』を知らなかったあの頃に戻って初回から聞き直したい。そんなことを思ってしまうほど『ハライチのターン!』は最高だ。
天才芸人・岩井勇気の凄さを書いたら『ハライチのターン!』についても書きたくなってきた。
『ハライチのターン!』はTBSラジオで毎週木曜24時〜25時(金曜0時〜1時)に放送されているラジオ番組。
残念ながら、放送されているのは一部の地域のみ。が、「ハライチのターン」で動画検索するとYouTubeとかにアップされてる過去回が大量に見つかる。
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さあ、いま最も面白いラジオ番組『ハライチのターン!』を紹介しよう。
オープニング
猫ちゃんニュース
ネコをこよなく愛する岩井の「週刊ネコちゃんニュース!」という叫びから『ハライチのターン!』は始まる。
聞き始めた当初は「なんだこのコーナー」と思っていたが、悪ふざけとしか言えない岩井の冒頭のネタがいつのまにかクセになってしまった。
猫ちゃんニュースで紹介され番組中たまに流れるようになった『メン・イン・キャット』のテーマ曲が頭から離れないリスナーも多いだろう。
オープニング曲
猫ちゃんニュースのあとに流れるオープニング曲は、(((さらうんど)))の『夜のライン』。
(((さらうんど)))はこの番組で初めて知ったが、あのイルリメ(鴨田潤)のユニットだそうです。
歌詞がいい。
君が夜を呼べば
空に月が灯り
暗い夜の街で
耳を研ぎ澄ませた
深夜ラジオにこれほどまでにふさわしい曲がほかにあるだろうか。
コーナー
『ハライチのターン!』では放送作家がコーナーを作るのではなく、岩井や澤部のフリートークを聞いたリスナーが勝手にコーナーを作って投稿し、人気を得て10週勝ち抜けば本物の『ハライチのターン!』に採用されるという形式になっている。
2017年12月現在、10週勝ち抜いたコーナーはないので「本物の『ハライチのターン!』」がなんなのかは岩井しか知らない。というか多分岩井も知らない。
ハネなかった時は容赦なく1週で終了させるし、人気コーナーも惜しみなくバシッと終わらせる。さらに、コーナー化を見越してありがちなメールを安易に選んだスタッフをクビにしようとする(2017年9月21日)など、常に岩井の厳しい目が光っている。
ダラダラと続くことはないし、ハガキ職人が送るネタのクオリティも高い。
コーナーが終わるときもフェードアウトするのではなく、しっかりオチがついているのがイイ。サワサワの習性のコーナーのラストで語られた「サワサワが目立ちたがりになった理由」(2017年7月13日)には全米が涙したことだろう。
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これまでのコーナーはWikipediaに詳しくまとめられている。
アンナの予言の概要欄の「澤部の娘」のリンクが「鵺(ぬえ)」に貼られていたり、リスナーならニヤリとしてしまう仕掛けも満載。書いた人エライ。
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個人的に好きだったコーナーをいくつか紹介させていただきたい。
メゾネットタイプ圧勝
1階と2階があるメゾネットタイプのマンションで一人暮らしをする岩井。
ことあるごとにメゾネットタイプのオシャレさを力説する岩井が、様々なものとメゾネットタイプを対戦させ、メゾネットタイプに軍配を上げるという、聞いたことのない人にはおそらく理解できないであろうコーナー。
コーナーと言っていいのかわからないほど一瞬で終わってしまったが、「メゾネットタイプ、圧勝」という岩井の無機質なセリフが忘れられない。
週刊イワイデー
「〜変な人」で終わる週刊誌の見出しを考えるコーナー。
数々の名作が投稿され番組最長となる9週目まで勝ち抜いたが、「メールを読む岩井が噛みまくった」というまさかの理由で終了となった。
ハガキ職人たちの秀逸なネタもさることながら、ジングルをムダに連発する岩井が最高。
アンナの予言
共演した女優を食い散らかす架空のイケメン舞台俳優・佐野ヨウスケを生み出した人気コーナー。
佐野にまつわるゴシップネタもいいが、個人的にはあるあるネタが大好きだ。
フリを2回繰り返して期待感を煽るアンナの予言は、あるあるネタを発表するフォーマットとしてとても優れていると思う。初見だと意味が分からないから使えないけど。
「ネクストコナンズヒント」(2017年8月10日)は澤部が「極上のあるある!」と唸った名作。「セブンイレブンの700円のくじキャンペーン」(2017年8月10日)、「鍵閉めたかな?」(2017年8月31日)も好き。
能力者
「忘却の彼方〜フォゲット・ザ・フォゲット〜」の能力者である岩井に引かれ合って集まった能力者リスナーが自身の特殊能力を紹介するコーナー。
『遊戯王』のカードや『ハンターハンター』の念能力のように日本語と英語で構成された能力名、能力者同士は引かれ合うという『ジョジョの奇妙な冒険』のスタンド使いのような設定など、アニメや漫画に慣れ親しんだリスナーにはたまらないコーナーだが、オール巨人師匠には「そういうのが分からへん人もいるから」と苦言を呈されてしまうかもしれない。
フリートーク
コーナーの後は二人の近況を交えたフリートーク。澤部、岩井の順番。
人気者の素顔を語る澤部
テレビ番組出演本数ランキングで毎回上位にランクインする人気者・澤部。
…が、暇さえあれば「実家」と呼ぶ個室ビデオ店に入り浸るという人気者にあるまじき私生活を語る澤部は、キラキラ輝くTVスターではなくただのひとりの男。実は根暗で人見知りなのに気づかれたがりという複雑な性格をもつ澤部ならではのエピソードが語られる。
家族(奥さん、二人の娘)が登場するほんわかした話もいい。
岩井の凄さの影に隠れがちだが、澤部のフリートークもおもしろい。
才能を遺憾なく発揮する岩井
岩井のフリートークの素晴らしさは前にも書いた。
独特な着眼点、構成力、発想力は本当にすごい。
例えば、名作と名高い「裏の世界」(2017年8月10日)。
よくよく考えれば、ただ岩井が近所のスーパーに買い物に行っただけの話だ。それを飽きることなく聞かせる構成力、随所に登場する「裏のピーコック」などのキャッチーなワード。
すごい。
私の乏しい語彙力ではすごいとしか言えません。
エンディング
二人のフリートークのあとはクールダウンして終わっていくのかと思いきや、『ハライチのターン!』は最後の最後まで濃密。TBSラジオクラウドで配信されているアフタートークが一般的なラジオ番組のエンディングっぽいかもしれない。
エンディングのミニコーナーも本編のコーナーに負けず劣らず秀逸。
クソ寅さん
『男はつらいよ』を観たことがない岩井が雰囲気で寅さんになりきりリスナーの悩みに答えるコーナー。
困ったらお天道様に聞いてくれと逃げる卑怯者のクソ寅さんだが、初の生放送回(2017年4月20日)で用意したネコがまったく鳴かないという危機的状況に降臨し、番組を救った。
ゴロリさん
岩井がNHK教育テレビ『つくってあそぼ』のゴロリさんに扮しリスナーの質問に答えるコーナー。
徐々にセル(若本規夫)みたいな声になってダークサイドに堕ちていくゴロリさんの姿をリスナーは固唾を呑んで見守るしかなかった。
漁師の腕を折りまくったり(2017年8月3日)、「ゴロゴロファイナンス」を立ち上げパチンコにハマる主婦たちにヒサン=1日3割で金を貸したり(2017年8月31日)するブラックなゴロリさんが脳裏に焼き付いて離れない。
さいごに
強めの下ネタや毒を含んだ時事ネタは深夜ラジオの醍醐味でもあるが、そういうのが苦手な人も多いだろう。『ハライチのターン!』にはそういった要素はほとんどない。だから「深夜ラジオはちょっと…」という人にもオススメしたい。
ハライチのファンじゃなくても楽しめると思う。むしろ『ハライチのターン!』をきっかけにハライチのことが好きになること間違いなし。
間延びすることなく聞ける1時間というコンパクトさもいい。
そのうちJUNKに昇格(?)する日が来るかもしれないが、2時間枠になったり毎週生放送になったりするのは若干不安。正直、生放送回は通常の録音回にはない緊張というか固さがあるよね(正直!正直!)。
アーカイブを気軽に聞く手段がないのが残念だ。radikoのタイムフリーで聞けるのは1週間以内だけだし。YouTubeにアップされたものを後ろめたい気持ちで聞くのもなんなので、公式にSpotifyとかで配信してくれないかな。
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ということで、長々と書いてきたが『ハライチのターン!』の魅力はまだまだ伝えられていない気がする。
『ハライチのターン!』という楽しみを1週間に1度しか味わえない現実が辛い。
そんなことを思ってしまうほど『ハライチのターン!』は最高だ。
ぜひ聞いてみてください。