スラムダンク、福井代表・堀高校のモヒカンの名前はスティーブ大滝
漫画喫茶で漫画雑誌をまとめて読んでいたら衝撃の事実を知った。
『スラムダンク』インターハイ福井代表・堀高校のモヒカン野郎のことだ。
連載終了から22年、ついに明かされたモヒカン野郎の真実……!
福井代表・堀高校のモヒカン野郎
あなたは『スラムダンク』のインターハイ福井代表・堀高校のモヒカン野郎を覚えているだろうか。
一コマ(単行本24巻175ページ)しか登場していないのにもかかわらず読者に鮮烈な印象を残したあの男。『スラムダンク』ファンなら画像を引用しなくても「ああ、アイツね」と分かっていただけるであろう。
そう、アイツだ。
ちなみに「堀高校のモヒカン野郎は山王からもスカウトされるほどの逸材だったが、そのあまりにも強いモヒカン愛ゆえに、坊主にしなくてはならない山王の誘いを蹴りモヒカン頭が許された堀に進学、華麗なテクニックで全国制覇に導いた」というのは俺のお気に入りの妄想である。
週刊少年ジャンプ50周年記念特大号(2018年33号)
『スラムダンク』の連載終了から22年、そんなモヒカン野郎の秘密がついに明かされた。
週刊少年ジャンプ50周年記念特大号である2018年33号(7月14日発売)だ。
- 鳥山明、井上雄彦のレジェンド対談(後述)
- 歴代漫画家直筆サイン色紙特集
- 歴代漫画家コメント集
- 現連載陣のフェイバリット・キャラクター紹介
- 『こち亀』の新作読み切り
などの興味深い特集のおかげか、2018年8月15日現在、Amazonでは古本が890円というプレミア価格で取引されている。
バックナンバーが充実している漫画喫茶に行けばたぶん置いてあると思うので探してみてほしい。
鳥山明 × 井上雄彦 黄金対談
50周年記念特大号の中でも目玉企画が「鳥山明 × 井上雄彦 黄金対談」。6ページに渡って特集されている。
- 『スラムダンク』のネームは数時間で出来るときもあった
- 鳥山明先生のアシスタントは歴代で2人だけ
- 天下一武道会のオブジェは描くのがめんどくさいからすぐ壊す
などなど、おもしろい話が盛りだくさんだったが、やはりなんといっても衝撃だったのが井上雄彦先生が語ったモヒカン野郎の真実だ。
モヒカン野郎、22年目の真実
井上雄彦先生がモヒカン野郎の真実を明かした部分を引用しよう。
― 連載中ファンレターが届くと思うんですけど、興味深かったものはありましたか?
井上: 半紙みたいな紙に墨で描いたファンレターに「このキャラを出してくれ!福井代表はこれにしてくれ!」って届きましたね。
鳥山: キャラを?
井上: 絵と名前と設定が描いてあって(笑)。福井って北陸高校がバスケ強いんですけど、「堀高校」って書いてあって。「エースはこいつ。スティーブ・大滝」って書いてあって。
(一同爆笑)
井上: なんか知らんけど、モヒカンで(笑)。訳わかんない面白さがあったんで…(コミックスを開いて)。
鳥山: 採用してるじゃないすか!
週刊少年ジャンプ50周年記念特大号(2018年33号)474ページ
堀高校、スティーブ・大滝!
なんか知らんけどモヒカン!
採用してるじゃないすか!!
「福井代表はこれにしてくれ」のあたりを読んでいるときに感じた胸の鼓動の高まりを分かってくれるだろうか。
あのモヒカン野郎は「スティーブ・大滝」という名前で、読者が考案したキャラクターだったのだ。
俺は井上雄彦先生を人として信頼する
このエピソードはすばらしい。
連載後期の人気絶頂の中、おそらく山ほど届いていたであろうファンレターにしっかりと目を通し「なんかおもしろいな」という直感からファンが考案したキャラクターを登場させたというその事実。
これがいい。
天才であろうとストイックな努力家であろうと、遊び心を忘れない人は信頼できる。
「さっさと『リアル』の続き描けよ」と思っていたことを謝りたい。井上雄彦先生、ごめんなさい。
感動の追体験
そして、このエピソードを知って、あのモヒカン野郎がなぜあんなにも印象的だったのかが分かった。
井上先生がファンレターを見たときに感じた「なんか知らんけどモヒカンで、訳わかんない面白さがあった」という気持ちは、我々があの一コマを見たときに抱いた感想とまったく同じである。
あらゆる芸術やエンターテインメントは感動の追体験だといえる。
作者が感動した瞬間、心が震わされた瞬間を直接あるいは間接的に作品に込めることで、それを受け取った観客や読者が同じような感動を得るのだ。
大袈裟に言うのならば、モヒカン野郎のエピソードはまさにそれを証明している。
ファンレターを見たときの井上雄彦先生の感動があの一コマに凝縮され、それを読んだ我々の心を揺さぶったのだ。
さらにその源はファンレターを送った読者の『スラムダンク』愛だし、もっと遡ればその読者を突き動かしたのは『スラムダンク』という作品に込められた井上雄彦先生の熱量であるともいえる。
僕らは連鎖する生き物だよ(Mr.Children「タガタメ」)。
さいごに
2017年の「インターハイ優勝校は名朋でも大栄でもなかった」という事実に続いて明かされた「福井代表・堀高校のモヒカンの名前はスティーブ大滝」という衝撃。
この調子でいくと2019年には「豊玉の金平監督と海南の武藤と常誠の御子柴は遠い親戚」みたいな裏設定がなんかの対談で明かされたりするんじゃないだろうか。
楽しみです。