スラムダンクのインターハイ優勝校は名朋でも大栄でもなかった
スラムダンクのインターハイ優勝校はどこか?
スラムダンクファンであれば自分なりの考察というか想像(=妄想)をしたことがあるであろう、このテーマ。
インターハイで優勝した高校、つまり全国制覇を成し遂げた高校はいったいどこなのだろうか?
作中で明らかになっているのは、海南大附属が2位だったこと(31巻175ページ)。23巻31ページのトーナメント表を見ると、海南は左側のブロックにいるので、優勝したのは右側の高校だということが分かる。
このトーナメント表は今見てもワクワクする。幽遊白書の魔界統一トーナメントの表に匹敵するワクワク感。どちらも2試合ぐらいしか描かれなかったけど。
「ここが優勝したのでは?」と巷でまことしやかに囁かれている高校をおさらいしよう。
名朋工業(愛知)
まずは、愛知代表の名朋工業。
名朋工業といえば森重寛。海南の牧、清田とともに花道が視察に行った愛知県大会で登場(21巻#187「一年坊主」)。明らかにシャキール・オニールをモデルとしたその巨体とラスボスオーラは館内の観客と読者に衝撃を与えた。
花道の夢にも登場している(22巻149ページ)。
私は完全に名朋が優勝したものだと思っていた。「普通に読んだらそうだろ」と思って疑わなかった。
大栄学園(大阪)
そして、大阪代表の大栄学園。
あの要チェック男・相田彦一をして「本当の要チェックはこの大栄学園やで……!!」と言わしめた大阪の真の王者である(21巻#188「彦一、大阪へ帰る」)。
エースはカッコイイのかカッコ悪いのかよく分からない顔の土屋淳。
「井上先生が雑誌のインタビューで大栄が優勝だと言ってた」というソースがはっきりしない都市伝説のようなものを聞いたことがある。
名前のモデルとなったと思われる大阪の大商学園が1994年の高校総体(インターハイ)で優勝しており、そのことから大栄優勝説を推す声も根強い。
博多商大附属(福岡)
山王、海南、名朋と並んでシード校になっている福岡代表の博多商大附属。名前のモデルはおそらく福岡大学附属大濠。1993年のインターハイで優勝している。
作中ではトーナメント表に名前が登場したのみで、その姿は一切描かれていない。「井上先生が九州出身だし、シード校になるくらいの強さなんだから博多商大附属が優勝では」という声がある。
昔、友だちが「ネットに書いてあったんだけど、スラムダンクのインターハイで優勝したのって博多なんだぜ」と言ってきて、「ネットの情報を疑いもなく信じてんじゃねえ」と言い争いになったのも今ではいい思い出。
堀(福井)
ひとコマしか出ていないにも関わらず圧倒的な存在感を放つモヒカン野郎を擁する福井代表の堀も忘れてはいけない。
モデルとなったのは福井の強豪、北陸高校かな?ほくりく。
24巻174, 175ページに1回戦突破チームが描かれているが、愛和学院や大栄学園、常誠といった学校とともに、それまで一切出てこなかった2チームがいきなり登場した。堀(福井)と浦安商業(千葉)である。
浦安商業はトーナメント左ブロックなので優勝はないが、堀は右ブロック。優勝の可能性が残されている。
モヒカン野郎は山王からもスカウトされるほどの逸材だったが、そのあまりにも強いモヒカン愛ゆえに、坊主にしなくてはならない山王の誘いを蹴りモヒカン頭が許された堀に進学、華麗なテクニックで全国制覇に導いた。
…というのは今適当に考えたウソである。
(2018年8月15日追記)
井上雄彦先生と鳥山明先生との対談で、このモヒカン野郎についてのエピソードが語られた。
井上雄彦と岡田優介の対談動画で明かされた真実
さて、様々な説があるスラムダンクのインターハイ優勝校だが、連載終了から20年の時を経て、ひとつの動画によって新たなる真実が明らかになった。
スラムダンクの作者である井上雄彦先生とBリーグ京都ハンナリーズ所属の岡田優介選手との対談動画である。
この動画の中で、他でもない井上雄彦先生その人がインターハイ優勝校について語っている。
記事自体は有料会員限定だが、動画は会員じゃなくても視聴可能。
井上雄彦先生のツイッターを見てたら、バスケット選手たちとの対談が紹介されていて、それをさかのぼって読んでいたら見つけた。
公開は2017年5月25日。
井上雄彦先生がこんなことを語る動画があったなんて全然知らなかったんだけど、自分が知らなかっただけで話題になってたんだろうか。
なんで誰も教えてくれなかったんだよ!
スラムダンクファンなら必見の動画。優勝校についての話題は最後、5:10〜。
せっかくなので動画で見て井上先生の肉声を聞いていただきたいが、いつまで公開されているかも分からないので該当部分を書き起こしておこう。
岡田: ちなみに、あれ優勝したとこってどこなんすか?
井上: え!それはね、あれなんですよ…
岡田: それは(この質問は)ナシですか?
井上: いや、あの…
岡田: 2位が海南じゃないすか。
井上: 2位が海南で…
岡田: 僕、1位はあそこなのかな、名朋工業なのかな、と。
井上: いや、あのね、それはないんですよ。
岡田: あるんすか、ちゃんと答えが。
井上: 一応、僕の中にはあって。
岡田: へぇ〜。
井上: でもその優勝したっていうチームは別に描かれてないんで。出てないチーム…
岡田: 出てこないチーム?
井上: 出てこないチームなんで…。名朋優勝じゃイヤだなっていうのがあって。
岡田: はい。
井上: まさに才能っていうか、そういう選手が優勝はイヤだな、っていうのがあって。
岡田: これ僕、一番いいのを引き出したんじゃないですか?
スラムダンクとバガボンドの違いとは 井上雄彦さん対談:朝日新聞デジタル
これは完全に岡田選手グッジョブ。京都ハンナリーズを応援したくなるほどのナイスプレイ。偉い!
優勝したのは描かれていないチーム
この対談で明確になったのは、インターハイ優勝校は名朋工業ではないということだ。これは井上先生の口から断言されている。疑いの余地なし。
大栄学園についても優勝校ではないと考えていいと思う。
井上先生の「優勝したっていうチームは別に描かれてない」という言い方は「優勝したチームがどこかは描かれていない」みたいなニュアンスに聞こえなくもない。が、そのあと「(優勝したのは)出てこないチーム」とはっきり言っているということは、おそらく大栄でもないのだろう。少なくとも自分はそう受け取った。
ただ、「出てこない」というのがどのレベルのことなのかは聞く人によって意見が分かれるところだ。堀派の人は「ひとコマぐらいじゃ『出てきた』とは言えないっしょ!」と主張するかもしれない。
「でもその優勝したっていうチームは別に描かれてないんで」のあとが編集でカットされているのがすごく気になる。どういう会話があったんだろうか。岡田選手だったら「大栄でもないんですか?」みたいなことを聞いてくれてそうな雰囲気。この対談動画の完全版が見たい。
いずれにせよ、1996年に連載が終了して以来20年以上に渡って名朋優勝派だった私には衝撃的な動画だった。
新たに発見された遺跡によって長年信じていた自説が完全に覆された歴史学者の気持ちが、今なら少しだけ分かる。
結局、優勝校はどこなのか?
名朋工業でも大栄学園でもないとしたら優勝校はどこなのだろうか。
「優勝したのは描かれていないチーム」と言われてしまうと、どこなのか本当にまったく分からない。ある意味、妄想し放題。
シード校で強いはずだから博多商大附属、というのは安易な気がする。そもそもスラムダンクは無名の湘北(ノーシード)が常勝山王(シード)を倒す物語なんだし。描かれていない学校にも花道みたいなのがいて、湘北みたいなドラマがあったかもしれない。
もちろん、博多商大附属が優勝だと考えるのも、ほかのチームが優勝だと考えるのも自由だ。
なお、私は23巻31ページのトーナメント表をしばらく眺めた結果、山梨代表の甲延優勝説を推すことにしました。理由は読み方が分からなくて謎めいているから。最後まで迷ったのは「ザワ」の描き文字に隠れてただ一校だけ名前が明らかになっていない青森代表の〇〇三商です。
確実に言えることがあるとするならば、インターハイでどこが優勝したかにかかわらずスラムダンクは素晴らしい漫画だし、答えが分からなくてもスラムダンク好きな仲間たちと空想の話を繰り広げるのは楽しい、ということだよね。
おわり。