スラムダンク、豊玉の金平監督の姿に胸を打たれた
再燃するスラムダンク熱
久しぶりに読んでからというもの、スラムダンク熱がふたたび高まっている。
水戸洋平は昔から好きだったが、30歳を越えて再読してみたら意外な人物が私の胸を打った。
大阪代表・豊玉高校の監督、金平だ。
連載をリアルタイムで読んでた小中学生のころは金平のことなんて何とも思わなかったのに、年齢を重ねるといろんな側面が見えてくるものだ。
金平という男
さて、どうだろうか。みなさんは金平という男を覚えているだろうか。
海南の武藤、あるいは常誠の御子柴に似た男だといえば思い出していただけるだろうか。そもそも武藤も御子柴も覚えていないだろうか。マイナーキャラをおんなじようなマイナーキャラで例えてんじゃねえよ、とお思いだろうか。すみません。
神奈川予選の海南戦、陵南戦、ましてや伝説の山王戦ほどのインパクトはもちろんないし、語られることも少ない豊玉戦。たぶん人気もないだろう。エースキラー南やチョンマゲ岸本は覚えていても、監督のことなんて誰も覚えていないかもしれない。
大阪代表・豊玉を強豪校に育て上げた北野監督の後任として抜擢された男、それが金平だ。
ラン&ガンを掲げた前任者・北野監督が超えられなかった全国ベスト8の壁を破ることが学校側から金平に与えられた課題だった。期限は2年。恐らく金平もやる気にみなぎっていたことだろう。
回想シーンで着任時の様子が描かれている。南や岸本が1年生の頃、湘南戦の2年前だ。
金平「新監督の金平だ
31歳!!若いぞ!!」
スラムダンク24巻 P114
ついに豊玉着任時の金平監督と同じ年齢になった。おっかしいなあ…ついこないだまで選手側の年齢だったはずなのに…。 pic.twitter.com/IWgd1Z8Cq7
— shiho (@maiku_642) 2016年4月20日
確かに若い。「ディフェンスを強化していく!!」と宣言する金平のお肌はツルツルに見えるし、目にも力がある。デキる男感が漂っている。
しかし、それから2年、北野監督を信奉する南や岸本たちと信頼関係を築けなかった金平は結果を出せずにいた。
湘北と戦う33歳の金平は疲れ切っているように見える。40歳だと言われても納得してしまうその顔には、ほうれい線が深く刻まれ、ルート33・堂土ばりに目の下はダルダル。2年間の苦労や困難が現れている。
豊玉の監督、2コ下。
— なかざわ (@giftokyo94) 2016年3月13日
こんなやつ、高3のときに高1にいなかったけどなぁ…。 pic.twitter.com/wBdxeM0V8f
金平のセリフに泣く
金平と部員たちとの緊張関係は湘北戦で限界に達し、爆発する。暴言にキレた金平は岸本をぶん殴り、溜めてきた感情をぶちまける。
金平「オレの半分しか生きてない お前らのその態度は何だ
オレはお前らが憎くてしょうがないんだよ!!」
スラムダンク24巻 P94金平「負けた時点でオレはクビだ!! 北野先生のように!!」
スラムダンク24巻 P95
アントラーズがJリーグチャンピオンになったけど、今年は金崎が途中交代に不満を示して大問題になってたし、今日も途中交代になった小笠原が不満を示してベンチとは反対のピッチサイドから出るわでやっぱり石井監督舐められてて、なんかスラムダンクの豊玉の監督思い出した… pic.twitter.com/1o4TUYbjiZ
— Ryosuke Kawauchi (@kawauchi_co) 2016年12月3日
絵に描いたような自暴自棄。読んでいるだけで胸が締め付けられる。分かる、分かるよ、金平。でもそれは言っちゃいけないよ、金平。
そして、すぐに後悔する金平。
金平「なぜあんなことを…相手は俺の半分しか生きてない子どもじゃないか…!!」
スラムダンク24巻 P101
年齢に追いついたことに気がついて一番ショックだったマンガのキャラはスラムダンクの豊玉の監督。
— まるむし( ・ㅂ・)و🍛 (@marumusisan) 2013年10月5日
リアルタイムで読んでる時は半分しか生きてない側だったのになぁ・・・ pic.twitter.com/TmEf72p0WT
リアルタイムで読んでいた当時、金平の半分しか生きてない子どもだった頃にはよく分からなかった金平の苦悩が、金平の年齢に近づいた今ならよく分かる。
このあとのつぶやきのようなセリフがいい。
金平「くそう オレはお前らが大嫌いだ
なのになぜ…負けちまえって気にならないんだ
それは… お前らが心底勝ちたがっていることは知ってるからだ」
スラムダンク24巻 P124
泣ける。
監督になってから2年間、どんな物語があったかは知らない。だがきっと金平は試行錯誤しながら全力で戦ってきたはずだ。金平はそういう男だ。たぶん。知らんけど。
最後は泣き叫びながら南を応援する金平。
金平「うおーっ いいぞ南!!」
スラムダンク24巻 P163
いい顔してるよ、金平。いいぞ金平!!
金平はオレなんだ
もっと早く感情を表に出していれば、部員たちとの関係も変わっていたかもしれない。あらゆる問題はコミュニケーション不全から始まる。
湘北戦のあと、金平は豊玉の監督をクビになってしまうだろう。しかし、挫折を経て指導者として一皮向けた金平は、いつかまた全国の舞台に戻ってくるはずだ。まだ33歳、金平の戦いはまだまだこれからだ。
ここまで書いてきて、なぜ金平の姿に胸を打たれたのかが分かってきた。
やりがいのある大きな仕事をアサインされながら、どうにもうまくいかず、プロジェクトチームのメンバーたちとの人間関係に悩み、疲れ果てている男、金平。
スラムダンクの中で、30過ぎのサラリーマンがこれほど感情移入できるキャラクターが他にいるだろうか。いや、いない。
ジョジョ第5部のナランチャのように叫びたい。
「金平はオレなんだッ!オレだ!金平のほうれい線はオレのほうれい線だ!!」
そう、金平はオレなのだ。