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池本幹雄『COSMOS』はジャンプ読み切り漫画の歴史的名作

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ジャンプ伝説の読み切り漫画、池本幹雄『COSMOS』

週刊少年ジャンプ史上最も有名な読み切り漫画は何か。

たぶんコレだ。池本幹雄の『COSMOS』。

どれくらい有名かというと、たった2回掲載されただけのド新人の読切作品なのにWikipediaにページができるくらい有名。

『COSMOS』(こすもす)は池本幹雄が、「週刊少年ジャンプ」(第一部:1997年30号、第二部:1999年20号)に掲載した読みきり漫画作品である。
COSMOS (漫画) - Wikipedia

もしも「ジャンプ読み切り漫画の名作ランキング」みたいなランキングがあったら、一位は間違いなく『COSMOS』になるだろう。それぐらい有名だし、それぐらいの傑作だと思う。

そして俺が史上最も心を鷲掴みにされた読切漫画は何か。

もちろんコレだ。池本幹雄の『COSMOS』。

どれくらい心を鷲掴みにされたかというと、衝撃のあまり2話分ともジャンプから切り抜いてしばらく保管してたくらい。原本はどっかいっちゃったけど、スキャンしたデータは今も持ってる。宝物です。

天才・池本幹雄の数奇な半生

そんな伝説の読切である名作『COSMOS』を描いた伝説の漫画家が池本幹雄。

こちらもWikipediaにページがある。

池本 幹雄(いけもと みきお、1977年1月13日-)は、日本の漫画家。京都府出身。男性。
池本幹雄 - Wikipedia

「すごい読切を描いたのなら、すぐに連載を始めて人気作家になってるんじゃないの?」と思うだろうが、残念ながらそうはならなかった。

天才・池本幹雄がたどった数奇な半生を紹介しよう。

最も連載を待たれていた新人(主に俺に)

1997年。

最初の『COSMOS』を読んだとき「この人は天才だ!」と思った。「いつ連載始めるんだ!」と思っていた。当時はネットで調べればなんでも分かるような時代でもなかったから、ただただ次の作品を待っていた。

そして、1999年。

2話目の『COSMOS』を読んだときは「お、ようやく連載開始か!?」と思った。また待ち続けた。

が、どれだけ待っても池本幹雄が連載を始めることはなかった。

岸本斉史『NARUTO』のアシスタントに…

さらに月日は流れ、2001年。

次に池本幹雄の名前を見たのは、岸本斉史『NARUTO』第6巻のアシスタント紹介ページ(P106)だった。

NARUTO -ナルト- 6 (ジャンプ・コミックス)
岸本 斉史
集英社
売り上げランキング: 67,481

プロフィール(コーヒー通だそうです)とともに掲載されていたのは池本幹雄が描いた日本刀を持つナルト。最高にカッコ良かった。一枚の絵からセンスが溢れ出ていた。ダダ漏れだった。

「アシスタントになったんだ…。自分の連載始めればいいのに…」と思った。まあ、しばらくアシスタントで修行してそのうち連載するんだろうな、とそのときは思っていた。

ずっと待っていた。

が、どれだけ待っても池本幹雄が連載を始めることはなかった。

結局、池本幹雄は『NARUTO』の連載終了まで実に15年もの間アシスタントを務めた。当然、自分の連載を始めることはなかった。

2chで心情を吐露(真偽不明)

2013年、池本幹雄らしき人が2ちゃんねるに書いたと言われている「とある人気漫画のアシをやっているんだが・・・」というタイトルのスレッドがある。

俺は名前を挙げれば誰もが知るくらい国民的な作品のアシスタントを 実に、12年に渡ってやってきた

12年間苦汁を舐め続けてきた

...

自分を育ててくれた恩、自分を養ってくれた恩、
菊池先生は自分の人生で、間違いなく最大の存在。
限りない感謝がある。そんな菊池先生を、漫画家という小学生からの夢を潰されたと思い、
憎んでいる、心のどこかで憎んでしまっている自分が、憎い
とある人気漫画のアシをやっているんだが・・・:ダメージ0

家庭を持ち安定したアシスタントに落ち着き、連載への思いが薄まっていってしまう葛藤、そして菊池先生(仮名、恐らく『NARUTO』の作者、岸本斉史先生のこと)に対する感謝と憎しみが合わさった心情が語られている。

真偽のほどは分からないが、書かれている内容に矛盾はないと思う。あくまでも自分の意見だけど、これは本当に池本幹雄本人が書いたのだと思っている。

もちろん、どこかの誰かが池本幹雄の境遇を元に創作しただけかもしれない。2chのスレッドなんて怪文書に過ぎない。

いずれにせよ、デビュー作の読み切りで高い評価を得た池本幹雄という新人漫画家が、その後10年以上に渡って人気漫画のアシスタントを務めて自分の作品を連載することがなかったというのは事実だ。

そしてついに連載開始、だが…

2014年、『NARUTO』の連載が終了した。「ついに池本幹雄が待望の連載開始か!」と思った。

そして2016年、池本幹雄は連載を開始した。だが、それはずっと待っていたものとは少し違っていた。

『NARUTO』の後日譚である『BORUTO』。

池本幹雄のオリジナル作品ではなく、原作・監修が岸本斉史、脚本が小太刀右京、漫画が池本幹雄という布陣での作品だった。

BORUTO―ボルト― 1 ―NARUTO NEXT GENERATIONS― (ジャンプコミックス)

ようやく自分の名前で連載を開始したのは嬉しいことだけど、やっぱり原作付きとかじゃない、100%池本幹雄の作品が読みたかった…。

池本幹雄が若い頃に連載を始めていれば、この世に名作マンガがもうひとつ生まれていたのかもしれないのに…と思う。大げさかな。

永遠の名作『COSMOS』と池本幹雄の魅力

いつの日か池本幹雄先生が渾身の連載を開始するのを願って、永遠の名作『COSMOS』とその作者である池本幹雄先生の魅力を語りたい。

センスにあふれた絵

まずは絵。魅力的な絵。

ひと目で分かる圧倒的な画力。

スクリーントーンを使わず白と黒で表現された絵が最高にステキ。スクリーントーンを使わないのは鳥山明や尾田栄一郎と同じですな。

各自、Google画像検索からチェックしてみてほしい↓。

どうですか。何でもないシーンも決めのシーンも最高じゃないですか!

背景もしっかり書き込まれているにも関わらず漫画として読みやすいし、キメのコマの構図もバッチリ。

上手いし、読みやすいし、個性も感じる。

今見ても古びた感じが全くしないのがすごい。もし今週のジャンプに掲載されたとしても、ものすごい反響を呼ぶんじゃないだろうか。よく言われているように確かに松本大洋(『鉄コン筋クリート』とか)の影響は感じるけど、オリジナリティは十分あると思う。

この人の連載読んでみたいでしょ?どう?読んでみたいよね?

読んでみたいよねえ…。

シャレオツなストーリーとセリフ、演出

画をちょっと見ただけでも分かってもらえる(と思う)ように、作品全体に流れるのはシャレオツな雰囲気。スカした感じがしなくもないけど、好きだ。

ストーリーもシャレオツ。こんな感じ。Wikipediaより。

秩序の消えた混沌の街「クレスタウン」。麻薬と暴力がはびこるカオスな街で、少年たちは気の合う者同士、徒党を組んで喧嘩に明け暮れていた。彼らは街の鼻つまみ者でしかなく、「愚者(フール)」と呼ばれてボス達の首には多額の賞金がかけられていた。その中でも、チーム「キャンディ」を仕切る少年バド・ワイザーには「一千万」という破格の値がつけられていた。賞金のためには人を殺すことも厭わないバド・ワイザーだったが、純情な少女ナイーブとの出会いにより心境に変化が生じ始める。
COSMOS (漫画) - Wikipedia

退廃的な世界観の設定とストーリーが絵柄によく合っている。

そしてセリフ。

主人公であるバド・ワイザーはもちろんヒロインのナイーブやチーム「キャンディ」の仲間たち、さらには悪役のチャマイヨまで、登場人物のセリフがイチイチかっこいい。

演出も最高だ。

例えば、ジャンプ1999年20号に掲載された2話目の終盤、バド・ワイザーが悪の大富豪チョマイヨの前に現れるシーン。

警備の人間の電話を奪って、電話越しにチャマイヨと会話するバド・ワイザー。

チャマイヨ「でけー声出すンじゃねえ、何事だァ」
バド「声がでけえぜ、チャマイヨ…」
チャマイヨ「誰だきさまッ、どこにいるッ」
バド「知りたいか?」
チャマイヨ「ふざけるな、出てこいッ」

ここでチャマイヨの後ろのガラスを割って登場するバド・ワイザー。三日月をバックに鉄パイプを持ったバド・ワイザーがくわえタバコで一言。

バド「ダスキンでーす」

シブい…!
当時の少年たちは掃除の時間ホウキを持って真似したに違いない。

ちなみに俺は真似しました。バド・ワイザーのように街の悪を掃除するわけではなく、ただふつうに教室を掃除するだけだったけど。

さらに、本性を現した"ポリスメン"アーリー・アメリカンに銃口を向けてバド・ワイザーが言う。

バド「ヒーローってのはな… 子供(ガキ)に正体バラしちゃあ 終いなンだよ…」

やっぱりシブい…!
当時の少年たちはシビれたに違いない。

ちなみに俺はシビれました。今読んでもシビれます。

唯一無二の空気感

そんな画と構図とセリフ回しとストーリーが渾然一体となって醸し出す空気感。

他の作品とはちがう唯一無二の空気感があったからこそ、読み切り2作だけにもかかわらず『COSMOS』はたくさんの読者を惹きつけ、その作者である池本幹雄先生はたくさんの読者から連載を切望されていたのではないだろうか。

いつの日か池本幹雄のオリジナル漫画を!

『COSMOS』は全力でオススメしたい漫画で、間違いなく名作だと思うんだけど、オススメしたところでどこにも売ってないのが悲しい。

『BORUTO』の単行本にそのうち掲載されないかな。

Amazonのレビューが低評価…。たしかに、画に動きがないというか躍動感がないのがちょっと気になった。

『BORUTO』は『BORUTO』でがんばってほしいけど、いつの日か池本幹雄先生オリジナルの漫画が読みたいです!

まだまだ待ってます!

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