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天才に憧れ努力し続ける男、三四郎・小宮浩信

ラジオ『三四郎のオールナイトニッポン0』が面白い。小宮と相田のテレビでは見られないのびのびとしたトークが最高だ。

そんな二人のインタビューが文春オンラインに掲載されていたのだが、これが非常によかった。

ということで、今回は三四郎の小宮浩信について書きたい。

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「こいつは天才だ!」と一目置かれている芸人、三四郎

三四郎が世に出るきっかけとなったのがテレビ東京『ゴッドタン』の「この若手知ってんのか2013・秋」(2013年9月28日深夜)。

三四郎は『若手の間で「こいつは天才だ!」と一目置かれている芸人』ランキングで見事一位に輝き、収録直前に大ケガをして前歯が欠けた小宮が車椅子に乗って登場。劇団ひとりからは「くやしいけどすぐ売れると思う」と評された。

その後、劇団ひとりのコメント通り着実に人気芸人となっていった三四郎だが、「天才的なセンスを見せつけてスターダムにのし上がった」というわけではない。

特に小宮は「天才」というよりも「天才に憧れる努力家」だと思う。今回はそれについて書きたい。

(「天才」という言葉がふさわしいのはどちらかというと相田だ、という話はいずれまた)

小宮浩信の比類なきワードセンスとオーソドックスなネタのスタイル

「小宮は天才ではない」と書いておいてなんだが、小宮のワードセンスは唯一無二だ。漫才のネタにおいてもフリートークでの切り返しにおいても、普通はあまり使われない独特なワードをチョイスする。

Wikipediaにちょうどいい記述があったので引用しよう。

小宮がやるツッコミは「○○であれ!(例:『ボケだったらツッコミの俺より異常であれ!』など)」「親の敵のように」「バチボコ(『とても』『非常に』といった意味の副詞)」「いじり急ぐな!」「脆弱なボケしてくんじゃねえよ」「耳の始まりを押さえるな!」「延髄を愛でるな!」などの独特な言い回しが特徴。
三四郎 (お笑いコンビ) - Wikipedia

もちろん、絶妙な言葉を選択するセンスは才能の一つだ。

しかし、小宮のそれは「生まれ持ったもの」というよりも「必死に吸収して得たもの」に見える。

小宮が書く三四郎の漫才のネタもどちらかというとオーソドックスなスタイルで、「俺のセンスを見よ!」という感じではない。

そもそも小宮は自分のセンスをそこまで信じていないように見える。

天才たちへの強烈な憧れ

「小宮のワードセンスは天性のものではなく必死に吸収したもの」「小宮は自分のセンスを信じていない」というのはただの感想であり妄想だ。

そんな妄想に至った小宮のトークを少しだけ紹介したい。

例えば『三四郎のオールナイトニッポン0』の2016年1月26日放送回。

ピース・又吉やオードリー・若林と同じ感性でありたい、という思いから説法が続く小説『教団X』を無理して読む小宮。

タモリや有吉と同じように振る舞いたい、という思いから後輩との待ち合わせに遅刻しないように慌てる小宮。

ほかにも例えば2017年10月13日放送回。

恋人同士でコンビをやっているにゃんこスターに対して「24時間お笑いのことを考えろ!」「お笑いの鬼と化せ!」「化せ!鬼と!」と吠える小宮。

ラジオでのトークだから大げさに語っているにしても、これらのエピソードから感じられるのは小宮の先輩芸人たちに対する強烈な憧れであり、理想の芸人像に少しでも近づきたいという熱い思いだ。

天才に憧れて無理して読んだ小説によってワードセンスが鍛えられているのではないかと推測するのもそこまで的外れではないだろう。

憧れだけで終わらない冷静な分析力

天才に憧れる人間は山ほどいる。先輩芸人に憧れる若手芸人も腐るほどいる。

小宮がその他大勢と違うのは憧れだけで終わっていないところだ。

自分自身を冷静に分析する力を持っている。ここがすごい。

冒頭で紹介したインタビューの一節を見てみてほしい。一度解散した二人が再びコンビを組んだ頃のことを語る小宮。

小宮 前と一緒じゃ、もう一回「三四郎」する意味ないと思ったんですよね。それに、僕は喋りながらずっと自分はボケの人間じゃないって感じてたんですよ。どちらかというと、何か言われて返す受け手のほうが良さそうだと。相田は昔からモノマネしたり、自分から表現していくところがあったから、役割はむしろ逆だろうなって考えついたんです。

小宮 その頃、サンドウィッチマンさんやアンガールズさん、おぎやはぎさんもそうですけどボケに対するツッコミ方に特徴が色々出てきていて、いいなあって思っていたんです。強いツッコミをしない感じ。今だとバイきんぐの小峠さんや、ハライチの澤部くんがそうですよね。それは僕にも向いているんじゃないかって、割と希望を持ってました。
(3ページ目)「つらいお笑いはもうしない」コイツ天才だコンビ・三四郎が“売れてる今”こそ思うこと

「自分はボケの人間じゃない」「受け手のほうが良さそう」「特徴あるツッコミは自分に向いている」。

お笑いコンビの解散と再結成という離婚して再婚するような大変な状況でも冷静に自分たちのことを客観的に分析している小宮はただものではない。

高校を留年しラジオでもたびたび漢字が読めない姿を晒している小宮だが、根っこの部分は非常にクレバーな人間なのだろう。

努力ができるという才能

そして分析するだけでも終わらないのが小宮。

ありふれた表現をするならば、小宮は天才ではないが努力ができるという才能をもっている。

小宮が(おそらく自分たちのことを冷静に分析して)書く漫才のネタはアドリブ感にあふれたものだ。

アドリブ感のあるネタはアドリブではできない。何度やっても同じようなアドリブ感を見せられるのはその裏に膨大な練習量があるからに他ならない。

『ざっくりハイタッチ』で鬼越トマホークにも「真面目なくせにポンコツキャラ演じてんじゃねえ」「アドリブ感出してるわりにメチャクチャ練習してる」みたいなことを言われていた。

小宮自身、インタビューでは「毎月25本のライブに出ることをノルマにしていた」と語っている。

小宮 久々にライブに行くと後輩ばっかなんです。毎月25本ライブに出ることをノルマにしてた昔は、先輩の名前を覚えるのに苦労してましたけど、今は逆に後輩の名前が覚えられない。
「つらいお笑いはもうしない」コイツ天才だコンビ・三四郎が“売れてる今”こそ思うこと

真面目にライブをやっていてよかったとも語っている。

――小宮さんが車椅子で登場した「この若手知ってるか2013秋」ですね。三四郎のお二人は「コイツは天才だ!」芸人の“非よしもと部門”1位として紹介されました。

小宮 2位だと番組に出られませんでしたから、それまでライブとかで真面目にやっててよかったと思いました、あの時は。
(2ページ目)「つらいお笑いはもうしない」コイツ天才だコンビ・三四郎が“売れてる今”こそ思うこと

憧れに近づくために冷静に分析し、その分析に従ってストイックに努力できる男。それが三四郎・小宮浩信なのだ。

三四郎・小宮は(ある意味で)お笑い界のシド・ヴィシャス

そんな小宮のことを考えていたら一人の男が頭に浮かんだ。

セックス・ピストルズのシド・ヴィシャスだ。

シド・ヴィシャスがもともとはセックス・ピストルズの熱狂的なファンだったというのは有名な話だ。憧れる側にいた男が憧れていたセックス・ピストルズに加入しパンク・ロックのアイコンとなり、憧れられる側になったのだ。

シド・ヴィシャスが小宮のようにストイックにベースを練習していたわけではないだろうし、小宮がシド・ヴィシャスのようにスキャンダラスな人生を歩むことも多分ないだろう。

しかし、憧れを原動力に突き進み、いつしか憧れられる側に成り上がるというその一点において、三四郎・小宮はお笑い界のシド・ヴィシャスであるといえる。

お笑いレジェンドたちに憧れる小宮はやがてレジェンドになっていくに違いない。

三四郎の面白さが世の中に知れ渡るのはまだまだこれから

三四郎・小宮は「天才」というよりも「天才に憧れる努力家」であり、憧れに近づくために冷静に分析し、その分析に従ってストイックに努力できる男なのだ、という話を書いた。(書いてるうちに思いついた「三四郎・小宮はシド・ヴィシャス説」は蛇足だったような気がする)

小宮の、そして三四郎の面白さはまだまだ世に知れ渡っていない。

しかし、小宮の冷静な分析力と努力ができるという才能(そして相田の天才性)があれば、「ポンコツ芸人の小宮とじゃない方芸人の相田」という限定されたパブリックイメージを覆す日は近いだろう。

とりあえずどれだけ売れてもラジオは末永く続けてほしい。

あと「バチボコ」は永遠に流行らないほうが面白いと思います。

おわり

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