小松純也と高須光聖が松本人志に訊く「ドキュメンタルとは?」
Amazonプライムビデオで配信されている『Documentary of Documental』を観た。
松本人志やプレイヤーたちへのインタビュー(Chapter 1)と、初公開となるパイロット版・幻のシーズン0(Chapter 2)の二本立て。
Chapter 1: 松本人志とプレイヤーたちが語るドキュメンタル
Chapter 1は、小松純也と高須光聖が松本人志に質問していくインタビューが軸。小松純也はもともとフジテレビの社員で『ごっつええ感じ』のディレクターだった人物。高須光聖はダウンタウンの幼馴染で、放送作家として活躍している。
そこにプレイヤー(出場芸人)たちの回想、シーズン1から3までの名シーンが差し込まれる構成になっている。
編集が良かった。
小松さんが企画・演出した初回(2003年)の『さんタク』を思い出した。別日に撮られたスタジオシーンとロケシーンの時間軸をバラバラにして再構成する編集が見事だった記憶がある。小松純也は時空を自在に操るマエストロだ。大げさに言うのならばきっとそういうことなんだろう。
総合演出という肩書きだし、今回はさすがに小松さん自ら編集したわけではないのかもしれないけど、良かった。
印象的だったところをいくつか書いていきたい。
松本人志の芸人評
インタビュアーを務めている盟友・高須光聖と二人でやっていたラジオ番組『放送室』の終了以来、松本人志が芸人を語る場面は少なくなってしまった。
各シーズンの初回、芸人たちの登場シーンで松本人志がその芸人に対する印象を語るのもドキュメンタルの楽しみの一つだが、今回も二言三言ではあるものの出場した芸人たちについて語っている。
名前があがったのは、ジミー大西、野性爆弾くっきー、宮川大輔、FUJIWARA藤本敏史、バイきんぐ小峠英二など。
Amazonのレビューで叩かれているフジモンに同情しているのがおもしろかった。
ちなみに、ドキュメンタルと同じくAmazonプライムビデオで配信されている『野性爆弾のザ・ワールド チャネリング』をちょこちょこ観ているそうです。野性爆弾ワールド全開でオススメ。
蘇る過去の名シーン
Chapter 1は随所に過去の名場面が挿入されているので、総集編としても楽しめる。
シーズン1から3をまだ観ていない人は先に本編を観たほうがいいだろう。
観た人には文字だけで脳裏に光景が蘇るであろう名場面の数々。
- アントニーの写真(シーズン1)
- 小峠とジャンポケ斉藤のジョイマン対決(シーズン2)
- くっきーのテディベア(シーズン3)
- ケンドーコバヤシとロバート秋山のマッサージ(シーズン3)
- フット後藤とプラスマイナス岩橋の奇跡の「つる」かぶり(シーズン3)
そして忘れてはいけない『春日のカレー』(シーズン3)。
春日自身が「自分でも想像しないスピードだったので…」としみじみと述懐しているのがよかった。34分頃から。
バナナマン日村が一番笑ったシーンとして挙げていた『何もせずに出てきた小峠』(シーズン2)もあらためて観ると最高だった。小峠はおじいさんのようにも見えるし赤ちゃんのようにも見える不思議な存在だ。まとっているオーラが面白い。
ドキュメンタルのおもしろさと、それを生み出すもの
松本人志とプレイヤーたちがあれこれと語っているなか、オードリー・春日の一言がドキュメンタルのおもしろさを最も的確に表しているように思った。
「(ドキュメンタルの)おもしろさって一言で言うと何なんですかね?」という質問に対して。43:10くらいから。
春日「やっぱり、自分が思っている展開じゃないことが起きることですかね」
アントニーの写真やRGの今昔庵のマスターみたいに、準備してきた小道具・ネタももちろん面白い。
でも、ドキュメンタルならではの爆発的なおもしろさは、誰も想像しなかった瞬間にこそ飛び出す。
そんな爆発を生まれやすくしているのが、ドキュメンタルのルールであり舞台設定だろう。
6時間という長尺の制限時間。
笑ったら負けという緊張感。
放送コードを気にしなくていいAmazonプライムという場。
そして、実力のあるプレイヤーたち。
ドキュメンタルの最高に面白い瞬間は偶然起こったものであるが、その偶然を生まれやすくしているのがドキュメンタルというフォーマットの凄さなのだと思う。
芸人たちの奇跡の瞬間を生む装置。それがドキュメンタルだ。
Chapter 2: パイロット版・幻のシーズン0
Chapter 2はパイロット版・幻のシーズン0。
最初から公開するつもりがなかったのか、出来がイマイチだったからお蔵入りになったのかは分からない。
いずれにせよ、ここまで撮ったものをためらいなく捨てられるのはスゴい。やっぱり結構な予算がついてるのかな。
プレイヤーは以下の面々。
- 秋山竜次(ロバート)
- ハチミツ二郎(東京ダイナマイト)
- 内間政成(スリムクラブ)
- 大島美幸(森三中)
- 斎藤司(トレンディエンジェル)
- こいで(シャンプーハット)
- 清人(バッドボーイズ)
- 久保田和靖(とろサーモン)
- おにぎり
- 板東英二
板東英二が良くも悪くもジョーカー的存在感を放っていた。
進化し続けるドキュメンタル
公開されたのは1時間くらいに凝縮されたダイジェスト。ところどころ光る部分はあったものの、もしこれがシーズン1として発表されてたらちょっと期待はずれだったんじゃないかな、と思う内容だった。
強く感じたのが、フジモンとかフット後藤みたいな広く状況を見渡せる存在の重要性。誰かが何かをやったときにちゃんとツッコむというか反応する人間がいないと、場が停滞してしまう。
シーズン1以降も後半は似たような状況に陥ることがあって、それを打開するために導入されたのがゾンビタイムなのだと思う。
荒削りなシーズン0を観ると、シーズンを重ねるごとにルールが洗練されていっているのがよく分かる。松本自身がレビューを読んでいると語っていたようにユーザーの声も届いており、ネット配信ならではの感じもする。
進化し続けていることもドキュメンタルを表すの特徴の一つといえるだろう。
来たるシーズン4
『Documentary of Documental』の配信に合わせて、シーズン4のプレイヤーが発表された。
- 飯尾和樹(ずん)
- 井戸田潤(スピードワゴン)
- くっきー(野性爆弾)
- 黒沢かずこ(森三中)
- クロちゃん(安田大サーカス)
- 大悟(千鳥)
- 西澤裕介(ダイアン)
- ノブ(千鳥)
- 藤本敏史(FUJIWARA)
- 宮迫博之(雨上がり決死隊)
注目はなんといってもコンビで登場する千鳥。ふたりともゲラなので一瞬で敗退しそうな気もするが、センスあふれるワードが飛び出すのを期待したい。
実は頭の回転が速いクロちゃんの達者な切り返しも楽しみ。
ゾンビシステムが導入されて負けたプレイヤーにも活躍の場が与えられるのはうれしいんだけど、「この人に最後まで残ってほしい」という気持ちが薄くなってしまった。負けてもゾンビとして活躍してくれればそれで満足。
レビューを読むと「なんでアイツが優勝なんだよ」みたいな意見も多いが、誰が優勝かはそんなに気にしないほうが楽しめるんじゃないかと思う。
とはいえ、せっかくなので優勝を予想すると、しれっと残りそうなダイアン西澤。
あとで一気に見るのもいいけど、毎週の配信を心待ちにする感じも好きです。