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スラムダンク、大栄学園の土屋淳は何のために登場したのか?

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『スラムダンク』最大の謎

『スラムダンク』最大の謎は何か。

宮城リョータの家の高すぎるシャワーの位置?(9巻#73「5月19日」)
現れたり消えたりする水戸洋平のTシャツ?(23巻#198「新幹線」)

違う。

土屋淳の存在意義だ。

土屋淳。インターハイ大阪大会を制した大栄学園高校の4番である。

この男はいったい何のために登場したのだろうか。何度も読み返したスラムダンクだが、これだけはよく分からない。

何のために生まれて、何をして生きるのか。答えられないなんて、そんなのはいやだ!

ということで、土屋について本気出して考えてみた。

インターハイ出場校のキャラクター達

神奈川予選のラストゲームとなった湘北vs陵南戦のあと新たに登場した、インターハイ出場校のキャラクター達。

湘北との試合が描かれた山王と豊玉のメンバーはもちろん、土屋以外のメンツは一応出てきた意味がある…と思う。

愛和学院・諸星大

海南の牧、清田と花道がわざわざ愛知県予選までプレイを見に行った愛知の星・諸星大(21巻#186「愛知の星」)。

いきなり担架に運ばれて登場し花道たちを驚かせるとともに、後述の名朋工業・森重の怪物っぷりを印象づけた。

また、ナレーションベースではあるが最後に湘北を介錯した男でもある。

山王工業との死闘に全てを出し尽くした湘北は
続く3回戦 愛和学院にウソのようにボロ負けした―
スラムダンク31巻167ページ

名朋工業・森重寛

愛知予選で諸星大を蹴散らしたのが名朋工業・森重寛。

モデルは明らかにシャックことシャキール・オニール。

結局、湘北と闘うことはなかったものの、花道の夢に登場(22巻149ページ)したり、愛知予選決勝の愛和学院戦(21巻#187「一年坊主」)やインターハイ2回戦の常誠戦(25巻#220「戦う前」)でパワフルなプレイがしっかり描かれていたりと、ラスボス的な存在感を放っていた。

常誠・御子柴

静岡No.1にして全国ベスト8の強豪(22巻160ページ)である常誠高校のキャプテン、御子柴。

豊玉の監督・金平、海南の武藤と同じ髪型をした男である。

インターハイ出場を決めた湘北の練習試合の相手として初登場(22巻#196「合宿3」)。練習試合の対戦成績は1勝1敗1分。試合の様子は描かれていないが、湘北が全国レベルの実力にあることを読者に示した。

インターハイでは森重を擁する名朋工業に大差で敗北し、放心状態となった御子柴が描かれた(25巻#220「戦う前」)。

大栄学園・土屋淳

そして土屋淳。

陵南の相田彦一が見に行った大阪予選の決勝で登場(21巻#188「彦一、大阪へ帰る」)。彦一が「本当の要チェックはこの大栄学園やで……!!」と唸るほどの実力を見せた。

しかし、その後はインターハイ1回戦を突破した様子と湘北vs山王戦を観戦する姿がわずかに描かれたのみ。セリフは一言だけ。

「尊敬するで……山王……」
スラムダンク30巻163ページ

思わせぶりに登場したが、湘北はもちろん他の高校の選手とも特に絡むことなく物語は終了。

コイツ別にいなくてもよかったんじゃないの?」と思ってしまう。

「そもそも山王戦で終わるんだったら森重や他のヤツらもいらないだろ」という意見もあるだろうが、それにしても土屋淳だけあまりにも出番が少なく、与えられた役割が小さすぎる。

そこそこフィーチャーされているにも関わらず、湘北メンバーと一切絡みが無いのは土屋だけだ。すれ違うことすらなかった。

この男はいったい何のために登場したのだろうか。

インターハイ優勝校はどこか?

さて、土屋の存在意義を考える前に、同じくスラムダンクの大きな謎とされてきた「インターハイ優勝校」について書いておきたい。

私はずっと森重の名朋が優勝だと思っていた。普通に読んだらそれしかないと思っていた。

一方で、土屋率いる大栄学園がインターハイを制したという大栄優勝説もある。もし大栄が優勝したのなら、活躍する姿はあまり描かれなかったものの、土屋はインターハイ優勝校のエースとして登場したということになる。

が、一つの動画で名朋説も大栄説も覆された。

他でもない井上雄彦先生その人がスラムダンクのインターハイ優勝校について語る動画である。この動画の中で、井上先生は「優勝校は名朋ではない」「優勝したのは作中に出てこないチーム」とはっきり語っている。

詳細は以下の記事で。

土屋のいない世界

大栄はインターハイ優勝校ではなく、土屋に与えられた存在意義は「インターハイ優勝校のエース」ではなかった。

土屋の存在意義を考えるために、土屋のいない世界を想像してみたい。土屋がいない世界に生じる隙間。その隙間を埋めるために土屋は生まれてきたに違いないのだ。

もしも土屋がいなかったら、湘北vs山王戦で「尊敬するで……」という人がいなくなる。…が、それはまあどうでもいい。

土屋がいない世界でインターハイ大阪予選を見に行った彦一の目に映るのは、優勝する豊玉高校と調子に乗ってはしゃぐテルオの姿であろう。

土屋がいる世界といない世界との大きな違い

それは、土屋がいない世界では大阪予選で豊玉が優勝してしまうということだ。

つまり、土屋は豊玉が優勝するのを防ぐために生まれてきたと考えられるのではないだろうか。

井上雄彦の思考

土屋の存在意義が豊玉の優勝を防ぐことだったとして、なぜ豊玉が優勝するとマズいのか。

ここで『スラムダンク』の創造主である井上雄彦先生の思考をトレースしてみよう。

トップランナーでの発言

Wikipediaによると、NHK『トップランナー』2000年6月15日放送回において井上先生はこう語っている。(トップランナーの映像は確認できなかったが、ここではWikipediaの記述を信じることにする)

「インターハイの組み合わせを作った時点で山王戦が最後と決めていた」
SLAM DUNK - Wikipedia

「インターハイの組み合わせを作った時点」というのがいつのことなのかはっきりしないので、ここからは私の妄想が大いに含まれる。

先の展開を何も考えず諸星や森重、土屋を出したとは考えにくい。インターハイに出場する全国の猛者たちを描いた時点で既に山王戦を物語のクライマックスにすると決めていたはずだ。

むしろ、ラストゲームの山王戦に向けてストーリーとその構成要素を組み立てていったと考えるべきだろう。

湘北の1回戦の相手

常勝山王は当然シードなので、湘北vs山王戦の前にもう一試合描かないといけない。

湘北とどの高校を戦わせるか。

何の前情報もないチームといきなり戦わせるわけにもいかない。

全国区の有名人である海南の牧を使って花道を愛知予選に向かわせ、名朋と愛和学院を登場させたが、名朋には得体の知れない怪物・森重を擁するジョーカー的な役割、愛和学院には山王戦のあと湘北を倒す役割を与えている。

そこで白羽の矢を立てられたのが陵南の相田彦一である。

関西弁を話す彦一を使って大阪のチームを描き、湘北の1回戦の相手にしようと井上先生は考えた。

が、大阪の優勝校が相手だとちょっと強すぎる感がある。『スラムダンク』は試合を重ねるに連れて際限なく敵が強くなるというジャンプ漫画にありがちなインフレを慎重に避けていた。

山王戦ではメンバーが(安西先生も)どんどん覚醒していくような展開を想定していただけに、1回戦の相手は等身大の湘北が勝っても違和感のないような、どこか隙のあるチームにしたい。

ということで、豊玉を決勝で敗北させた。

土屋淳を使って。

逆噛ませ犬、土屋淳

豊玉の格をちょっと落とすためだけに登場した逆噛ませ犬、それが土屋淳だ。

長々と書いた結果、ありきたりな結論に落ち着いたが、これが私の結論である。

もし私が土屋だったら、井上雄彦に文句の一つも言っていただろう。

井上さん、俺の出番これだけっすか?思わせぶりに出てきてセリフ一言だけやないですか…

が、本物の土屋はそんなことは言わなかった。文句一つ言わず、静かに、そして見事に自分の仕事をやり遂げたのである。

誰が笑えるというんだ…?彼を…!

尊敬するで……土屋……

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