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やなせたかし先生が書いた略歴が中二病コピペっぽくて勇気をもらった

アンパンマンの作者として有名なやなせたかし先生が書いた自身の略歴を読んだ。なんだかすごく勇気をもらえた。

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過去の自分との対峙

むかし書いた文章を読み返すのは恥ずかしい。

卒業文集の作文とか、なにを書いたか全く覚えてないけど、たぶん何かしょうもないことを書いていた気がする。卒業アルバムの写真や作文を公開されてしまうことを考えると、アイドルとか犯罪者にはなりたくないな、と思う。

…というこの文章自体、明日読み返すと、なんて恥ずかしいこと書いてるんだ、と思うかもしれない。

ふと思い立って始めたこのブログも、たまに昔の記事を見返すと、何を書いてんだコイツは、と思うことが多々ある。で、ちょこちょこリライトしたり、ざっくり削除したりしてる。

大げさに言えば、過去の自分と対峙することは、誰にとっても少なからず恥ずかしさを伴うことなのだと思う。自信満々の人もいるのかもしれないけど。

やなせたかし先生が51歳で書いた略歴

ここで、あのアンパンマンの作者として知られる、やなせたかし先生が著書「十二の真珠」に載せた自身の略歴を紹介したい。やなせたかし先生は1919年生まれで、「十二の真珠」は1970年に出版された短編メルヘン集である。

さまぁ〜ず大竹が「さまぁ~ず×さまぁ~ず」で語った「チリンの鈴」の原作も収録されている。

この「十二の真珠」の巻末で、51歳のやなせたかし先生が書いた略歴がこれである。

略歴

銀河系宇宙の片隅に生まれる

職業 人間業
著書 愛する歌1・2・3集
昭和42年週刊朝日漫画賞(ボオ氏)
  昭和44年毎日新聞映画コンクール大藤賞(やさしいライオン)
  あとノーベル賞とかレーニン賞とかいろいろもらう予定
残念ながらナシ 将来は未定
十二の真珠(Amazon)

どうだろうか。

銀河系宇宙の片隅に生まれる
職業 人間業
残念ながらナシ 将来は未定

のあたりとか、どうだろうか。

このシニカルな感じ、ムズムズしてこないだろうか。いかにも卒業文集に載ってそうな、あとで読み返したら恥ずかしくなってしまうパターンのヤツじゃないか!

内容はぜんぜん違うけど、醸し出す雰囲気から、なんとなくこのコピペを思い出す。

初カキコ…ども…

俺みたいな中3でグロ見てる腐れ野郎、他に、いますかっていねーか、はは

今日のクラスの会話
あの流行りの曲かっこいい とか あの服ほしい とか
ま、それが普通ですわな

かたや俺は電子の砂漠で死体を見て、呟くんすわ
it’a true wolrd.狂ってる?それ、誉め言葉ね。

好きな音楽 eminem
尊敬する人間 アドルフ・ヒトラー(虐殺行為はNO)

なんつってる間に3時っすよ(笑) あ~あ、義務教育の辛いとこね、これ

70歳の先生は20年前の自分の文章をどう思っていたか

実はこの「十二の真珠」という本は、1970年に発売されたあと、1990年と2012年に二度も復刊されている。

2012年に発売された『十二の真珠』は、1970年に山梨シルクセンターが出版した『十二の真珠』と、1990年にサンリオが出版した『十二の真珠』を底本に、再編集して復刊ドットコムが出版したものである。
十二の真珠 - Wikipedia

1990年版に『あたらしい「まえがき」』として、やなせたかし先生はこんなことを書いている。

今読むと非常に恥ずかしいが、ぼくのその後の作品の基本型はすべてこの十二篇に含まれている。未熟ではあっても僕には大切だ。
十二の真珠(Amazon)

そして、

復刊するのにはかきあらためたい部分もあり、特に絵は全面的にかきなおしたかったが、これはやはり原型のままにしておくべきだとの意見にしたがった。カバーのみ新しくした。
十二の真珠(Amazon)

ということで、十二の短編もあの略歴もそのままの形で記載されている。

70歳のやなせたかし先生は、20年前の自分が書いた文章を読み返して、「非常に恥ずかしい」「未熟」と感じていたのである。数週間前に書いたブログの記事を「恥ずかしい」「未熟」だと感じている私のように。

「大切だ」と思えるかどうか、という大きな違いはあるかもしれないが。

ちなみに、2012年版にも新たにまえがきが追加されているが、残念ながら作品自体に対する言及はなく、93歳になったやなせたかし先生が40年以上前に自分が書いた作品をどう思っているかは分からない。

十ニの真珠 (ふしぎな絵本)
やなせたかし
復刊ドットコム
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恥ずかしがるな、感じたことを書け!

40歳の作家が20歳の頃の作品に対して「恥ずかしい」「未熟」だと感じるのは分かる気がする。「若気の至り」という便利な言葉もある。

衝撃的だったのは、70歳になっても50歳の頃の作品に対して同じような感情を抱いていたということだ。40過ぎれば「不惑」じゃねえのかよ、と文句を言いたくもなる。もちろん、やなせたかし先生がそうであっただけで、他の歳を重ねた作家さんたちはそんなこと感じていないかもしれない。

それでも、少なくともやなせたかし先生は、50歳の頃の作品を20年後に読み返して「恥ずかしい」「未熟」だと感じていた。その事実になんだかとても勇気をもらった。

どうせあとで恥ずかしくなるんだから、何を書いてもいいんだ。その時そう感じたのならば、そのままを書けばいいんだ。少将来振り返ったときに100%完全に満足できる作品なんて書けないんだから。

「十二の真珠」に収められた短編自体も非常にいい作品揃いでその感想を書こうと思ったら、略歴とまえがきだけで書きすぎてしまった。

恥ずかしくて未熟な文章だけど、とりあえず書き残しておこう。

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