クイック・ジャパン『水曜日のダウンタウン』特集号はファン必読の書
『水曜日のダウンタウン』を知るもの来たれ!
『水曜日のダウンタウン』はお好きですか?
私は好きです。
『ロマンシング サ・ガ3』のトレードも好きです。好きなグループは「ナジュの熱き血」と「ジャングル・フィーバー」です。
『ロマサガ3』はさておき、『水曜日のダウンタウン』を愛するすべての人たちに読んでいただきたい本がある。『クイック・ジャパン vol.134』2017年11月号だ。紙版は税込1080円。
表紙を見ればひと目で分かるように『水曜日のダウンタウン』特集。
パワーボムされる三四郎・小宮のパラパラ漫画は楽しめないが、Kindle版のほうがお買い得。税込648円。
こだわりと狂気の特集
特集のタイトルは「この番組、こだわりと狂気が紙一重説」。
総合演出・藤井健太郎の著書は『悪意とこだわりの演出術』だったが、今回は「こだわりと狂気」。
「こだわり」と「狂気」と「悪意」。どれをとっても、藤井健太郎というテレビマン、そして、『水曜日のダウンタウン』という番組をよく表した言葉だと思う。
「狂気のモンスター」クロちゃん、目隠しインタビュー
特集の冒頭を飾っているのは「クロちゃん目隠しインタビュー」。
目隠しのまま当たり前のようにインタビューでよくある手振りをするクロちゃんの写真が最高。
初っ端にこの企画を持ってきているあたり、クイック・ジャパン編集部のみなさんの『水曜日のダウンタウン』への愛は本物だ。
「寝たら起きない王」ではただのモンスターだったクロちゃん。
目隠しされたままのインタビューで、事実ではない内容をつぶやく自身のツイートをウソではなく「肉付け」あるいは「アレンジ」だと言い張り、「僕自分にウソをつきたくないんですよ」と嘯くクロちゃんに、心の奥底にある狂気が垣間見えた。
芸人たちへのインタビュー
クロちゃん以外の芸人たちへのインタビューも多数収録されている。こちらは目隠しなし。
登場するのは以下のメンツ。番組の検証でたびたびドッキリにかけられるメンバーと「みんなの説」プレゼンターたち。豪華!
- 三四郎・小宮浩信
- バイきんぐ・小峠英二 / 西村瑞樹
- オードリー・春日俊彰
- マテンロウ・アントニー
- あかつ
- ハリウッドザコシショウ
- 千鳥・大悟 / ノブ
- 小藪一豊
- たむらけんじ
- 陣内智則
ドッキリ常連のメンバーたちが皆一様にこのインタビュー自体をドッキリなんじゃないかと疑っているのがおもしろかった。
「ドッキリも度を超えれば人災」という名言を吐く小宮や、「電流に耐性がついた」というとんでもないことをサラリと言ってのける奇人・西村など濃厚な内容。
音楽とデザインのこだわり
藤井健太郎『悪意とこだわりの演出術』でも語られていた音楽とデザインへのこだわり。このクイック・ジャパン『水曜日のダウンタウン』特集号でもしっかり紙面が割かれている。
PUNPEE x テイ・トウワ x 藤井健太郎 鼎談
番組テーマソングのtofubeats『水星』をリミックスしているPUNPEEと、その元ネタであるKOJI 1200 『ブロウ ヤ マインド ~ アメリカ大好き』を手掛けたテイ・トウワ、そして総合演出・藤井健太郎の鼎談。
テイ・トウワ自身の口からGEISHA GIRLSの音源製作時のエピソードが語られていたり、PUNPEEが小学生の頃『HEY!HEY!HEY!』のオープニングで使われていたGEISHA GIRLSの「Kick & Loud」を聴いていたという話をしていたり、時代がつながっている感じがヒップホップ的。
デザインチームODDJOB
ロゴデザインの変遷、スペシャルのオープニング解説など、こちらも濃い。
今回のクイック・ジャパンの表紙もODDJOBが手がけている。表紙だけではなく、本編ページのフォントや色使いも抜かりなく『水曜日のダウンタウン』感にあふれていて素晴らしい。
ところで、「みんなの説」のロゴとかに登場する英文タイトル「WEDNESDAY on DOWNTOWN」は「DOWNTOWN on WEDNESDAY」のほうが正しいと思うんだけど自分が知らないだけで何か元ネタがあったりするんだろうか。
単純に『水曜日のダウンタウン』の順番に合わせただけかな?
「地獄の軍団」ディレクター座談会
バナナマン設楽に「地獄の軍団」と名付けられたチーム藤井。特にそういう組織があるわけではなくフリーのディレクターたちの集まり。
なかなか表に出てくることがないディレクター陣の座談会が掲載されている。
『水曜日のダウンタウン』とともに『クレイジージャーニー』も担当してる方が3人ほどいたのが印象的だった。『水曜日のダウンタウン』と『クレイジージャーニー』を同時に担当するってすごい疲れそうだな。
藤井健太郎のことを語る「地獄の軍団」軍団員たちがよかった。
- 「(意外と)バーベキューとか好き」
- 「家に入れてくれない」
- 「(家に入れる前に)足拭かされるって聞いた」
- 「自分のことすぐ『常識人』って言いすぎ」
なんか愛されてる感じがして、いいチームだなと思った。
そのほか
インタビューなどの取材モノ以外も力が入っている。
スタッフが選んだスター名鑑ランキング
次から次に登場する『水曜日のダウンタウン』名物キャラクターたち。
- ゴミ屋敷の住人・久保嶋光嗣
- 元死刑囚・竹澤恒男
- 元タカラジェンヌ・光原エミカ様
- 透視能力者・ホフマン
など、強烈なインパクトを残した面々が目白押し。名前だけだと誰だか分からなくても、写真と説明文を読めば番組ファンならすぐに思い出せるだろう。
みんなのあいうえお表
キャラクターランキングと合わせてファンなら見逃せないのが「『水曜日のダウンタウン』の説で頭文字50音全て揃う説」として掲載されている「みんなのあいうえお表」。50音それぞれで始まる説が一覧になっている。
「こんな説あったなあ」と思い出し笑いしてしまうこと請け合い。
藤井Pコメント付きボツ説メモ
欄外も見落としてはいけない。
ボツになった説が藤井健太郎のコメントとともに紹介されている。
「底なし沼、底ある説」に対する「やっておけば『池の水全部抜く』的な企画になっていたかも」という悔しそうなコメントとか、「偏見だと思います」と冷たく切り捨てるコメントとか。
『悪意とこだわりの演出術』で「やろうかどうか迷っている」と書いていたアイアンメイデンのネタがボツになっていたのは残念だった…。
なぜダウンタウンなのか
「『水曜日のダウンタウン』は別にダウンタウンじゃなくてもいいんじゃないの?」という感想をたまに見かける。
自分がリアルタイムで『ごっつええ感じ』を観ていたダウンタウン世代だからなのかもしれないが、『水曜日のダウンタウン』という「こだわり」と「狂気」そして「悪意」をはらんだ番組のMCをダウンタウンが務めていることには意味があると思う。
バイきんぐ・小峠のインタビューでの言葉に頷かされた。
小峠:
番組の企画とダウンタウンさんが合ってるような気はしますね。誰もやらない新しいお笑いをいろいろ作ってきたダウンタウンさんと、お笑いの未知の部分を開拓しようという番組の相性がいいというか。
P32
藤井健太郎インタビューの最後の質問も『水曜日のダウンタウン』がダウンタウンの名を冠した番組であることの意義を問うものだった。
「やっぱりダウンタウンさんじゃないとダメですか?」
この質問に対する藤井健太郎の答えが良かった。
スタッフが「こだわり」と「狂気」に満ちたロケをストイックに行う理由、芸人たちが「悪意」に溢れたドッキリや検証を素直に受け入れる理由はそこにあるのだと思った。
そのまま書いてしまうと推理小説のネタバレを書いているような気がしてしまうのでここでは引用は控えたい。ぜひ自分の目で確かめてみてほしい。