ダニー・ボイル「127時間」を観て人生について考える(ネタバレあり)
ダニー・ボイル監督、脚本、製作の「127時間」(2010年公開)を見た。
前々からいつか見ようと思いながら見そびれていたんだけど、Amazonプライム・ビデオにあった。ありがとう、Amazon。
(2017/11/30追記) 現在はプライムビデオの対象外になってしまいました…
実話に基づいたストーリー
登山家のアーロン・リー・ラルストンの自伝「奇跡の6日間」(Between a Rock and a Hard Place)が原作。キャニオリング中に岩とともに滑落して、右腕が岩に挟まれ身動きが取れなくなってしまい…という実話に基づいたストーリー。
主人公アーロンはジェームズ・フランコが演じている。
Wikipediaの記事は思いっきりネタバレが書いてあるので注意してほしい。
作中ほとんどの時間アーロンは腕を挟まれていて身動きが取れないので、アクションはごく少ないんだけど、見せ方がうまくハラハラさせられる。さすがダニー・ボイル。
ボイルは本作を「動かないアクション映画」と説明した。
127時間 - Wikipedia
おっしゃる通り、まさしく「動かないアクション映画」。
大自然の映像が美しい
ほとんどアーロンの一人芝居ともいえるこの映画だが、もう一人の主人公といってもいいのが、大自然。
青空と岩肌の鮮やかな色の対比が美しい。特に突き抜けた空の青さ。
どんよりと湿っぽくなりそうなストーリーだけど、あまり暗く感じさせないのはこの空の青さのおかげだと思う。
こういう色のキレイさはカメラの性能のおかげなんだろうか、カメラマンの腕によるものなんだろうか、そもそも現実の色がキレイなだけなんだろうか。RX100M5を買ったカメラマン見習いとしては気になるところ。
運命を受け入れるか、立ち向かうか(ネタバレあり)
ストーリーについて書きたい。ネタバレありです。
岩に挟まれて数日がたち、いよいよ死を覚悟したアーロンは自分の人生を振り返り、悔やむ。
あのときああしていれば、違う結果になっていたんじゃないか。
こんなことになってしまったのは、全部自分のせいなんじゃないか。
「すべては俺の今までの人生が招いた結果」
「俺が…引き起こした」
「この事故を」
「この岩は、俺が来るのを待っていた。ずっと―」
「宇宙の、隕石の時から―」
「何十億年も前から、宇宙で待っていた」
「ちょうどこの場所へ落下するのを」
「俺の人生は、生まれて以来、毎日のあらゆる行動がここへとつながっていた」
「この大地の裂け目へと」
でも、アーロンは諦めなかった。運命に立ち向かい生きることを選んだ。
アーロンは挟まった右腕を自ら捻り切ることを決断し、実行に移す。この辺の描写がすごくリアルで痛々しい。人によっては見てられないかもしれない。鑑賞中に気を失った観客もいたらしい。
自分ならどうするか
右腕を岩に挟まれることはないかもしれないが、何かを犠牲にしないと前に進めないという状況は、誰にでもやってくるだろう。
そんなとき、どうするか。
これまでの人生を悔やんで、その場に立ち尽くすか。 大切なものを失ってでも、前に進むか。
何かを失わないと、新たな何かを手に入れることは出来ない。大なり小なり誰にでも起こることだ。きっとそういう選択の連続が人生なんだろうと思う。
結末が読めてもドキドキする
正直、自伝が原作ということで主人公が死なないのは分かってるし、腕を切るしか助かる方法がなさそうなのは大体見当がつく。
でも、結末が読めるからといってこの映画がつまらないかというと、そうではない。その結論に達するまでのアーロンの葛藤、苦悩がしっかり描かれているからだ。
アカデミー賞6部門にノミネートという評価にも納得の、いい映画だった。
おすすめです。