劇団ひとりに学ぶ「天才の仕事術」
テレビ東京プロデューサー・佐久間宣行が語る、「天才」劇団ひとり
ちょっと前に公開された、『ゴッドタン』や『キングちゃん』を手がけるテレビ東京・佐久間宣行プロデューサーのインタビュー記事が面白かった。
テーマは、「天才」劇団ひとり。
“天才P”との呼び声も高い佐久間氏だが、彼自身は誰を天才と感じているのだろうか? その答えは……。
「“劇団ひとり”です」
それではその真意をじっくりと聞いてみよう。
(中略)
――そもそも佐久間さんにとって、「天才」の定義はどんなものでしょうか?
佐久間 才能だけじゃなくて、勇気と実行力があって、道を切り開ける人、ですね。だから「あの人天才なんだけど、恵まれなくて」みたいなことを言われる人は、あまり「天才」だと思わないです。そういう意味で、劇団ひとりはパイオニア的なところがたくさんある。天才ぶらないからわかりづらいだけで。
劇団ひとりは、なぜ「天才」と呼ばれるのか? テレビ東京・佐久間宣行プロデューサーが語る「天才」の条件 - 朝日新聞デジタル&M
"今をときめくキーパーソンに「誰を『天才』と思うか」を聞いていく新連載"とのことだが、その一発目に佐久間宣行と劇団ひとりを持ってくるあたり、この企画を考えた人エライ。
「お笑い風」という用語にちゃんと注釈が付いていたり、細かい部分も良かった。
(注:「お笑い風」とは『ゴッドタン』でハライチ・岩井勇気が提唱した概念。バラエティー番組などにおいて、出演者の取るに足らないトークをあたかも面白い話のように受け止め、場を盛り上げる芸人の技術やスタンスを指す)
劇団ひとりは、なぜ「天才」と呼ばれるのか? テレビ東京・佐久間宣行プロデューサーが語る「天才」の条件 - 朝日新聞デジタル&M
年末年始のテレビ番組を観てたら「劇団ひとりはやっぱり天才だな」と思ったことがあったので、今回はそれについて書きたい。
2017〜2018年の年末年始特番での劇団ひとり
2017年から2018年にかけての年末年始特番でも大活躍だった劇団ひとり。
いくつか振り返ろう。
ダウンタウンのガキの使いやあらへんで 絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス
大晦日の年越し特番も12回目ということで完全にパッケージが出来上がっている『笑ってはいけない』。マンネリという言い方もできるかもしれない。
別に年末感も年越し感も新春感もなんにもないので、録画して年明けにダラダラ観るのが好きだ。今回はいろいろ批判されているが「そんなに真剣に観るものでもないのに」と思う。
『笑ってはいけない』で毎回楽しみなのが板尾創路と劇団ひとりのコーナー。
今回も一番面白かったのは劇団ひとりだった。ちなみに次点は千鳥の漫才のバイク。
ワイヤーアクションで思いっきり天井に叩きつけられる劇団ひとり。見たことのないタイプの体の張り方。
本来もう体を張る必要なんてないポジションにあるにもかかわらず、体を張ることを厭わない劇団ひとりの姿勢が清々しかった。
ゴッドタン マジ歌選手権
そして、『ゴッドタン マジ歌選手権』。
佐久間宣行プロデューサーのインタビューでも言及されていた田原俊彦「トシムリン」、ゴールデンスペシャルでの波田陽区「波田ニューヨーク」に続くリアルマスクネタは、片岡鶴太郎「ウォーキング・鶴太郎」。
マジ歌ありがとうございました! pic.twitter.com/uS02nghikh
— 劇団ひとり (@GekidanHitori) 2018年1月1日
最近いろんな芸人がネタにしている片岡鶴太郎のヨガだが、自らが片岡鶴太郎に扮した上で、「ボクシングとか水墨画みたいにヨガもすぐ飽きるんだろ?」という誰もが薄々思っていたことをオブラートに包むこともなく剥き出しで歌うという、劇団ひとりならではの離れ業。
同じ太田プロだから出来たのだろうか。
ついでに書いておくと、ハライチ岩井のキュウソネコカミ風のマジ歌「忘れねえからな」も良かった。2018年はぜひブレイクを果たしていただきたい。
さらについでに書いておくと、野呂佳代・朝日奈央の完コピにゃんこスターものまねが再び登場したのが嬉しかった。2018年は二人にとっても飛躍の年になるだろう。特に朝日奈央。
クイズ☆正解は一年後2017
順番は前後するが、最も「劇団ひとりやっぱり天才」と感じたのがこの番組。
2017年末に放送された『クイズ☆正解は一年後2017』だ。
次項に詳しく書きたい。
劇団ひとりが『クイズ☆正解は一年後2017』で見せた凄み
藤井健太郎(『水曜日のダウンタウン』演出)が手がける、年末恒例の特番『クイズ☆正解は一年後』。年始に出題編を収録し、年末に生放送で答え合わせをするという大掛かりな番組。
この番組での劇団ひとりが凄かった。正確にはこの番組のあるクイズでの劇団ひとりが凄かった。
キンタロー。に関するクイズである。
年始の収録で「キンタロー。について問題が出されますよ」と宣言されていて、年末の生放送でキンタロー本人から自身にまつわる問題が出されるという流れ。
このクイズでの劇団ひとりが凄い。
飼いネコの名前や観光大使に就任した都市名といったキンタロー問題に正解しまくる劇団ひとり。2時間の番組の中でここが一番面白かった。
私が選ぶ『クイズ☆正解は一年後2017』のハイライトは「キンタロー。クイズ」での劇団ひとり無双で決まりだ。野性爆弾くっきーの「オダムド」や「ホタテオ」も面白かったけど。
劇団ひとりさん❗️❗️
— キンタロー。 (@Kintalo_) 2017年12月30日
本当にありがとうございました涙涙#クイズ正解は一年後 pic.twitter.com/Jpq9JnW4mQ
なぜ、劇団ひとりは「キンタロー。クイズ」に正解できたのか。
何の事はない。ブログを読み、ラジオを聞き、単独ライブに顔を出し、DVDを買う、という猛勉強の結果だ。
「正解しまくったら面白いだろうな」というのは誰でも思いつく。ブログを読むのだってライブに行くのだって、やろうと思えば誰でもできる。
でも、それを実行する・実行できる人間はいない。
まさに佐久間宣行プロデューサーが天才の条件として挙げていた「実行力」である。
小藪一豊やバカリズム、おぎやはぎなど錚々たる芸人が揃うなか、「キンタロー。クイズ」に対して入念に準備してきて正解を連発したのは、劇団ひとりだけだった。
年末の特番とはいえ、たかだか5分くらいのコーナーのひとつのボケのために膨大な時間を費やすその姿勢に、劇団ひとりの凄まじい天才性を感じた。
天才の仕事術
自らが信じるもののために、時間という最も貴重なリソースさえも躊躇なく投入する。
これが天才の仕事術だ。
天才はコストパフォーマンスなんて気にしない。
コスパがどうとか言ってる奴は、プロフェッショナルではあるかもしれないが、天才ではない。ほどほどの力で80点を取るのは天才の仕事ではないのだ。
…と、完全なる凡人であるワタクシが書いても何の説得力もないけど、きっとそうなのだと思う。
「天才」劇団ひとりの今後に期待
「天才」劇団ひとりの全身全霊を懸けた仕事をこれからも楽しみにしたい。
特に期待しているのが、Amazonプライムの松本人志プレゼンツ『ドキュメンタル』への参戦。たぶん最強だと思う。
いつか出てほしいなあ。
年明けの『ゴッドタン』でもやっぱり天才
(2018年1月20日追記)
年明け早々、『ゴッドタン』(2018年1月13日深夜)での劇団ひとりもやっぱり天才だった。
内容は「キングコング西野VS劇団ひとり完全決着SP」。
CMを抜いたら正味20分ちょっとの番組とは思えない濃密さだった。
最初の服の破き合いがちょっとしたウォーミングアップ感覚になっている時点で何かがおかしい。普通の番組だったらこれがクライマックスでもいいくらいだ。
そして、「キンタロー。クイズ」への猛勉強にも通ずる、キングコング西野『革命のファンファーレ』に対するあまりにも真摯な読書感想文、というか書評。キンタローのラジオを聴いてブログを読むかたわら、『革命のファンファーレ』もしっかり読み込んでいた劇団ひとり。これぞ天才の仕事術。
圧巻だったのが狂気の髪切り対決。「スポンサーへの配慮に芸人魂が勝った瞬間」を目の当たりにして、大袈裟に言うのならば、カタルシスを感じた。
ジャンボ尾崎風・劇団ひとり。
堂々と渡り合ったキングコング西野も素晴らしかった。
散切り頭を叩いてみれば文明開化の音がするように、二人の頭を叩いてみれば革命のファンファーレが鳴り響くに違いない。
最後は安定の泣き芸。最高。
本当に濃密だった。スペシャルでも何でもないレギュラー回でこの内容を見せつける『ゴッドタン』は恐ろしい番組だ。
…
年末の『クイズ☆正解は一年後』で不自然なサッパリヘアースタイルだった謎が明らかになったのも良かった。年をまたいだ伏線回収。
ゴッドタンの「劇団ひとりvsキングコング西野」最高でしたね。正解は一年後の有吉チーム楽屋で「これくらい髪型変わる時ってホントは事前にスポンサーに言わなきゃいけないんだって…」と仰ってました。
— 藤井健太郎 (@kentaro_fujii) 2018年1月16日
抑揚のない太ジーパンを穿く佐久間宣行とオシャレな藤井健太郎、二人の番組がリンクした瞬間。
2018年も二人の番組から目が離せない。
もちろん、天才・劇団ひとりからも目が離せない。