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オードリー・春日俊彰の公開プロポーズはなぜ感動的だったのか

2019年4月18日の『モニタリング』で、オードリーの春日俊彰が長年の恋人クミさんにプロポーズする模様が放送された。これが非常に感動的だった。

なにがそんなにも感動的だったのか。

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変わらない男、春日

春日俊彰といえば「変わらない男」である。

なにしろ、多数のレギュラー番組を抱える売れっ子タレントになっても、風呂なしのボロアパートであるむつみ荘に20年近く住み続ける男である。

ブレイクのきっかけとなったM-1グランプリ2008以降、ピンクのベストに八二分けのテクノカットという変わらぬ出で立ちで、変わらぬギャグを10年以上やり続ける男でもある。

テレビ番組の企画でボディビルを始めてムキムキになったり、ラジオ『オードリーのオールナイトニッポン(ANN)』で鍛えられ、トークやツッコミなどお笑いのやり方を「覚えてきた」(ANN 2018年4月28日)りしているが、芯の部分は何も変わっていないように見えるのが春日という男だ。

考えるのをやめた究極生命体、春日

「変わらない男」である春日がその哲学を語った印象的な言葉がある。

外からの刺激に対して、逃げたり、防御したりしない。ノーガードでそのまま食らってるだけ。何も考えない。考えるから、抵抗したくなったり、ストレスになったりするわけでしょ。状況が変わらないなら、考えるだけムダ。何も考えずに、ただ宇宙を漂ってるような生き方のほうがラクだよね。

だから、むつみ荘にも住めるし、東大受験やエアロビもやれる。「よくできるよね」って人から言われるけど、何も考えてないから。イヤでもないし、楽しくもないよ。
オードリーとオールナイトニッポン・自分磨き編 P15

何も考えずに、ただ宇宙を漂ってるような生き方。

これはもう『ジョジョの奇妙な冒険』第二部に登場した究極生命体・カーズがジョセフ・ジョースターに敗れたあとの状態である。

ー カーズは ―
2度と地球へは戻れなかった…。
鉱物と生物の中間の生命体となり
永遠に宇宙をさまようのだ。
そして、死にたいと思っても死ねないので
ー そのうちカーズは 考えるのをやめた。
ジョジョの奇妙な冒険 第12巻

外からの刺激に対して何もしない。そのまま食らうだけ。何も考えない。

悟りを開ききった禅僧が最後にたどり着く境地のようでもある。

「(春日の日課である)エロパソはヨガや瞑想のようなものなのではないか」という若林の考察はおそらく的外れではない。毎晩数時間に渡って無心でエロ動画を探し続ける行為は思考からの逃避であるといえるだろう。

何も考えない。だから、変わらない。

何も考えないから、同じ家に住み続けるし、同じギャグをやり続ける。何も考えないから、待てと言われれば6時間待つ(『水曜日のダウンタウン』2016年11月30日)。

「何も考えずに、ただ宇宙を漂ってるような生き方のほうがラクだよね」という言葉には「カスガ」というキャラクターとしての演出も含まれているだろうが、春日俊彰という一人の男の本心でもあるはずだ。

変わりつつある春日

何も考えないという生き方は、春日のどこか傍観者的な視点にも現れている。

ラジオでもそのようなエピソードがたびたび語られている。私は春日のサイコパス的な話が大好きなのでいくつか例を挙げたい。

  • アメフト部の最後の試合が終わりチームメイトが泣いている中、「これが青春ってやつか」と一人だけニヤニヤしていた(ANN 2010年7月17日)
  • 父親が亡くなったことを伝える若林からのLINEに「残念なことでございやしたね」と返した(ANN 2017年9月9日)
  • ブレイク前、『爆笑オンエアバトル』で113キロバトルに終わったあと若林から「もうやめよう」と言われ、「どっちでも大丈夫ですね」と答えた(ANN 2017年10月21日)

しかし、ここ数年、そんな他者と干渉しない春日に変化が見えてきた。

それが端的に現れているのが姪っ子とのエピソードである。

動物ものでしか泣かないと公言していた春日が、姪っ子を溺愛し、卒園式や運動会などのイベントのたびに号泣しているという。姪っ子のためにそらジローの生中継に行ったり、DSをプレゼントしたり、「宇宙を漂っていたい」と言っている男とは思えない人間くさい行動が語られている。

肉親だけではない。

番組で共演するけやき坂46(現・日向坂46)のライブに行った際には会場の外で観客の声援を聞いただけで涙を流すなど、年をとって涙もろくなってきたというだけかもしれないが、それにしても明らかに感情を表に出すことが増えてきている。

「変われない男」だった春日のプロポーズ

このように、何も考えず何も変わらない男だった春日に徐々に変化の兆しが見えてきた、というのが最近の状況だった。

そんななか行われたのが公開プロポーズである。冒頭に書いたように、これが非常に感動的だった。

お相手のクミさんは「春日のどこがいいの?」という質問に、隠しカメラの前でこう答えていた。

変わらないところがいいのかもしれない。

そこはやっぱ信用できるし信頼できるしっていう。
モニタリング(2019年4月18日)

変わらなさは間違いなく春日の魅力の一つだ。特にブレイク前からの付き合いであるクミさんにとって、どれだけ売れても変わらない春日の姿は「信用できるし信頼できる」ものであっただろう。

そんな春日の変わらなさについて、春日自身の口から違った側面が語られる。

春日からクミさんに宛てた手紙の一節。

結婚で何かが変わってしまうのが怖かったのです。
クミさんのことより、自分のことしか考えてこなかったのです。
好きな人の一生を幸せにする覚悟が生まれるのに10年もかかってしまいました。
モニタリング(2019年4月18日)

春日という男は、クミさんが言うように「変わらない男」である一方、春日本人が自覚しているように「変われない男」でもあった。少なくとも自らの意思で変わろうとはしない男だった。

結婚で何かが変わってしまうのが怖い。

「考えるだけムダ、ただ宇宙を漂っていたい」とうそぶきながら変わろうとしなかった男は、意地悪な見方をすれば考えることから逃げていた男、さらにいえば変化を恐れていた男だった。

この公開プロポーズは、「カスガ」というキャラの鎧をまとい自分の気持ちを言うことをほとんどしてこなかった男がカメラの前で初めて自分の弱さを認めて本心を晒した瞬間だったといえる。「(春日が泣いているところを)初めて見た」というように、それは10年以上の付き合いのクミさんにとっても初めてのことだったのかもしれない。

そして若林。おそらくクミさん以上に春日のことを理解する若林が大量の涙と鼻水を流しながら語った言葉がまた良かった。

春日も自分の気持ちを言うの苦手でね。
変化することを嫌う人だからって知ってるからさ。
勇気が必要だったんだろうなと思って。
モニタリング(2019年4月18日)

「変化することを嫌う人」である春日は「変化することを恐れる人」でもある。そんな春日が勇気を出して変化を受け入れたのだ。

結婚で何かが変わってしまうのが怖い。それでもあなたと結婚したい。

感動的じゃないか。

さいごに

春日もクミさんも40歳。「10年は長すぎる」「待たせすぎ」と文句を言いたくなる気持ちも分からなくはない。それでも、「変われない男」だった春日が勇気を出して「変わった」。だからこそ春日の公開プロポーズは感動的だった。

クミさんとの結婚生活が幸せなものになれば(きっとなるはずだ)、春日の心に「変わるのも悪くないな」という気持ちが芽生えるのではないか。

公開プロポーズ後の記者会見ではあくまでも「カスガ」として受け答えをしていたが、変化を受け入れた、変化を恐れなくなった春日はさらなるスターへと変貌を遂げるだろう。

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