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ジャルジャルが高校時代にハマっていた芸人とダウンタウンの呪縛

nasneで録画していた番組を整理するついでに2017年のM-1グランプリを見た。あらためて見てもジャルジャルのネタは最高だった。

そして、最近始まったショートコント動画を8000本アップするという「JARUJARU TOWER」。

久しぶりにジャルジャルのネタを見て感じたのが、「ジャルジャルのコントや漫才からはダウンタウンの影響をあまり感じないな」ということ。

ダウンタウンの呪縛にとらわれていない、と言ってもいい。

20歳そこそこの若手ならまだしも30歳を超えているジャルジャルはダウンタウン世代であるはずなのに。

今回は、

  • あらゆる芸人に影響を与えたダウンタウン
  • なぜジャルジャルはそんなダウンタウンからの影響を受けていないのか

について書いてみたい。

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キングコング西野が語る、ダウンタウンの影響

キングコングの西野亮廣がホリエモンとの対談動画でデビュー当時のことを語っている。2分40秒くらいから。

キングコングがデビューした2000年前後、まわりの芸人たちはみんなダウンタウンの漫才をコピペしてダラダラ喋るスタイルだったという。

ダラダラ喋るのはダウンタウンの漫才というよりもフリートークやテレビ番組での立ち居振る舞いの影響のような気もするが、いずれにせよダウンタウンの影響を受けた芸人たちばかりだったのは間違いないだろう。

あのザキヤマ(アンタッチャブル山崎)ですら若手のころは松本人志に憧れてボソボソしゃべる芸風だったというのだから、その影響力は計り知れない。

ちなみに西野はそんなまわりの芸人たちを見て、賞レースで勝つことを目指しスピード感があり手数の多いキングコングのネタを創り上げた。ダウンタウン(に影響を受けた先輩たち)とは違うことをしようとしたキングコングも間接的にダウンタウンに影響されていたといえるかもしれない。

ダウンタウンの漫才の革新性

自分はジャルジャルとほぼ同世代で、ダウンタウンの漫才をリアルタイムで経験した世代ではない。だから、ダウンタウンの漫才がどれだけ衝撃的だったかはイマイチ実感できない。

「ダウンタウンの漫才は革命だった」というような話を聞いたり読んだりしてもピンとこない。YouTubeにアップされているダウンタウンの漫才を見てもそんなに革新的だとは思えないし、むしろものすごくオーソドックスに感じる。

しかし、それこそがダウンタウンの漫才の革新性と影響力の大きさを示しているのだと思う。

本当に革新的なものはすぐに当たり前になる。そして、多くの人が真似をしてすごいスピードで進化していく。

例えば、初代iPhone。

昔の携帯電話を知っている世代は初代iPhoneがその後の携帯電話の進化の方向を決定づけた革新的なプロダクトだと理解できる。が、スマホが当たり前になった世代からすると、初代iPhoneは小さくてデザインも洗練されていない古臭いスマホにしか見えない。

同じように、進化しまくった現在の漫才に慣れ親しんだ視聴者がダウンタウンの漫才を見ても、そこに新しさは感じないだろう。

過去を知る世代が「革命」と呼ぶモノが若い世代にとって革新的に見えないのは、そのモノがすべてを変えてしまうくらい革新的だったからだ。

過去の漫才をよく知らない自分にはダウンタウンの漫才が革命だとは思えない。だからこそ、ダウンタウンの漫才は本当に革命だったんだろうな、と思う。

ダウンタウンの影響という意味でいえば、漫才のスタイルだけでなく『ごっつええ感じ』のコントや『ガキの使い』のフリートークでの発想力も多大な影響を与えていることは言うまでもない。

ジャルジャルが語る、自分たちの笑いの原点

ダウンタウンからの影響を受けていないように見えるジャルジャル。それはなぜなのか。

千原ジュニアがホストを務めていたラジオ番組『アッパレやってまーす!』(MBSラジオ)の2015年1月13日放送回で、ジャルジャルがゲストとして登場し、

「お笑いを始めたきっかけは何だったんですか?また、誰に憧れて芸人になったんですか?」

という質問に対して、自分たちのお笑いの原点を語っている。

ポイントをいくつか書き出そう。

  • 二人は同じ高校のラグビー部で一番仲がよかった友だち。
  • 授業中に携帯メールで笑かしあいをしていて、それがいつしか漫才のネタの台本になった。
  • そのころは部活が忙しくてテレビをあまり見てなかった。
  • 唯一二人がハマったのがふかわりょう。福徳が持っていたふかわりょうの本を後藤に貸して二人で楽しんでいた。
  • 後藤が好きだったのは替え歌の嘉門達夫。家族みんな好きだった。
  • 『ごっつええ感じ』は小学生のころ見てたけど、当時はあまり意味が分からなかった。

高校時代に二人がハマっていたのは、ダウンタウンではなくふかわりょう(の本)だった。

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ふかわりょう。

あるあるネタの切れ味の鋭さには定評があるし面白いものの、正直、芸人から憧れられるタイプの芸人ではない。

深夜番組『オー!!マイ神様!!』でカズレーザー(メイプル超合金)が「ふかわりょうのポジションを尊敬している」と語り話題になっていたが、あくまでも芸人としてのポジションの話だった。

進行役カズレーザー(メイプル超合金)は、「僕みたいな若手からしたら、ふかわさんのポジションがすごく羨ましい」と語った。ふかわの仕事は彼しかできない、実は代わりがいない仕事ばかりだと称えたのだ。そして「尊敬していますね」とカズレーザーから目の前で言われたふかわは、「ホントこういうの弱い」と目を潤ませていた。
ふかわりょうが涙 カズレーザーに「尊敬しています」と言われ - ライブドアニュース

ジャルジャルがダウンタウンからの影響を受けていない理由はとても簡単だった。

お互いを笑わせあって二人の笑いの基礎を形作っていた高校時代に、単純にダウンタウンに触れていなかったのだ。

ジャルジャルの高校時代は2000年前後。上で紹介したように、キングコング西野が言う「芸人たちはみんなダウンタウンの漫才をコピペしていた」時代。

高3のときからお笑いオーディションを探すほどお笑いが好きだったのにもかかわらず、若手芸人がこぞってダウンタウンを追いかけていたころにダウンタウンのテレビ番組を見ることなく、フラットな目線でふかわりょうの本を楽しんでいた二人。

ジャルジャルのしつこいほどに反復するネタの構成は、ふかわりょうのあるあるネタを披露するフォーマットの影響が感じられないこともないが、おそらく純粋にふかわりょうのネタが好きだっただけで、特に強く影響されたというわけでもないのだろう。

誰の影響も受けずに独自の進化を遂げた特異な存在。

それがジャルジャルだ。

第二のダウンタウンは第一のジャルジャル

ダウンタウンの影響を受けていないジャルジャル。

そんなジャルジャルを当のダウンタウン松本人志が高く評価しているのが興味深い。

2017年のM-1グランプリで松本人志が「一番おもしろかった」と評価したのがジャルジャルのネタだった。松本人志は3, 4年前(もっと前だったかな?)にも「おもしろい若手芸人は?」という質問に「ネタはジャルジャルがおもしろい」みたいなことを言っていた記憶がある。

そこで思うのが、ジャルジャルこそが「第二のダウンタウン」なのではないか、ということだ。

「第二のダウンタウン」でも「第二のビートルズ」でも何でもいいが、「第二の〇〇」というのは本来存在しない。「第二の」と枕詞がついている時点で本家本元には永遠に届かないからだ。

ビートルズもダウンタウンも先駆者であり、誰かのフォロワーではなかった。

もちろん色んな先人たちを見て少なからず影響を受けていただろうが、今のダウンタウンを「第二の紳助竜介」と呼ぶ者はいない。

ジャルジャルは「第二のダウンタウン」と呼ばれていないし、呼ぶ必要もない。

しかし、そう呼ばれることがなくても、ジャルジャルこそが「第二のダウンタウン」に最もふさわしい存在なのかもしれない。ジャルジャルはあくまでも「第一のジャルジャル」だからだ。

ジャルジャルは「第一のジャルジャル」であるからこそ「第二のダウンタウン」なのだ。

ジャルジャルの進化は続く

長文をしたためてしまったが、特に結論はない。

とりあえずジャルジャルにとってラストイヤーとなる2018年のM-1が待ち遠しい。めちゃイケも終わって時間が増えるだろうから、いろんな番組にも出てほしい。

例えばダウンタウンの影響を受けた芸人は最終的にダウンタウンのようになっていくのだろうが、誰からも影響を受けていないジャルジャルがどうなるかは誰にもわからない。

きっとこれからもジャルジャルの進化は続く。

ジャルジャルの未来が楽しみだ。

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