ゴッドタン演出・佐久間宣行『できないことはやりません』感想
『ゴッドタン』や『キングちゃん』を手がけるテレビ東京のプロデューサー、佐久間宣行(敬称略)。
千鳥ノブ曰く、抑揚のない太ジーパンを穿く男である。
そんな佐久間Pが、2014年の『キス我慢選手権 THE MOVIE2 サイキックラブ』公開にあわせて上梓したのがこの本。
『できないことはやりません 〜テレ東的開き直り仕事術〜』。
ブックオフで見かけたので買って読んでみたらなかなかおもしろかった。
『仕事術』というサブタイトルがついてはいるが、実務的なノウハウというよりは、佐久間Pがテレビマンとしてどういうことを経験してきてどういうことを考えてきたか、といった内容。
おぎやはぎや劇団ひとりとの出会いなど、『ゴッドタン』好きには見逃せないエピソードもふんだんに語られている。
感想を書きたい。
佐久間宣行という人物
プロフィール
佐久間宣行は1975年生まれ。おぎやはぎの二人(1971年生まれ)と劇団ひとり(1977年)のあいだ。
1975年生まれ。福島県いわき市出身。テレビ東京プロデューサー。1999年早稲田商学部卒業後、テレビ東京に入社。『TVチャンピオン』などで経験を積みながら、入社3年目に異例の早さでプロデューサーとして抜擢される。
できないことはやりません――テレビ東京プロデューサー・佐久間宣行インタビュー|佐久間宣行|cakes(ケイクス)
ツイッター、インスタもやっている。
向かって左が佐久間P。右は『めちゃイケ』でおなじみのヨモギダくん。
インタビューなど
メディアに取り上げられることも多く、この『できないことはやりません』の発売時にも特集されている。
千鳥ノブに「佐久間Pは5体いる」と言われるほど映画やドラマのインプットを欠かさない理由について語ったインタビューも印象的だった。
僕、Googleカレンダーに2ヶ月先ぐらいまで「テレビを見る時間」とか入れてるんです。本を読むのは「B」って書いて予定を抑えたり、映画の公開時期も全部調べて予定に入れてます。予定がかぶると、調整くんみたいなやつでふるいにかけて、いける日を決めて(笑)。
そこまで管理してでも、インプットを続けたいんです。ドラマも1週目は全部撮って、土日に全部まとめて見ます。
おじさんが若者にウケ続けるには? テレ東「ゴッドタン」Pが続けていること
千鳥が佐久間Pについて語っているのはコチラ。
抑揚のない太ジーパンという衝撃的なパワーワードが登場している。
ちなみに『ゴッドタン』(2018年2月10日)で鬼越トマホークのケンカを止める佐久間Pがチラッと映ったが、たしかに抑揚のない太ジーパンを穿いていた。
『できないことはやりません』の装丁もビックリするほど抑揚がない。本当にない。抑揚が。
才能がない者の戦い方
『できないことはやりません』を読んで驚いたのが、『水曜日のダウンタウン』を手がけるTBSの藤井健太郎の著作『悪意とこだわりの演出術』との共通点。
仕事術(あるいは演出術)として書かれている内容の骨子がとても似通っている。
出版されたのは『悪意とこだわりの演出術』のほうが後だが、もちろん藤井健太郎がパクったわけではなく、両者が同じような考えを持っているということだろう。
簡単にまとめると以下のようなことだ。
- 自分は天才ではない(センスがない)
- それでも編集などの作業に時間をかけてクオリティを上げることはできる
- 好きなことじゃないと「熱量と時間」を費やせない
- だから「好き」を仕事にすることが大切
これは「好きなことを仕事にしたほうがいい」というアドバイスであるだけでなく、「熱量と時間を費やさないと戦えない」という厳しい現状認識でもある。
はたから見れば佐久間宣行も藤井健太郎も才能とセンスに溢れているように見える。
そんな二人が恐ろしいほどの「熱量と時間」をかけて仕事に取り組んでいる。
才能がないのであればそれ以上に「熱量と時間」を費やさないといけない。それは好きなことでないとできない。
佐久間宣行が語る芸人たち
本文中にも芸人たちとの様々なエピソードが語られているが、おもしろかったのは各章末の「私の出会ったエンターテインメント界の才人たち」というコラム。
取り上げられているメンツは以下の通り。タイトルとともに引用しよう。
- 劇団ひとりはなぜ天才なのか
- 天性のテレビスター・おぎやはぎ
- お笑いモンスターが二人揃ったバナナマン
- 猛スピードで進化中のバカリズム
- バチバチにやり合った加藤浩次さん
それぞれ2ページだけで分量は少ないものの、
(バナナマン)設楽さんの頭の回転の速さは尋常ではありません。
P120
バカリズムの仕事への姿勢をひとことで言うなら、まさに「ストロングスタイル」。お笑いに関しては本当にストイック
P160
という「やっぱりそうなんだ」みたいなものから、
(おぎやはぎは)仕事に対しては飄々とした態度の内側に熱い部分が隠れていたりもします。 P78
というちょっと意外なものまで、長年の仕事を通じて深いところまで理解している佐久間宣行ならではの芸人評が綴られている。
あと「佐久間Pは心の底から劇団ひとりのことを天才だと思ってるんだな」というのがよく分かる。私も劇団ひとりは天才だと思います。
- 関連記事: 劇団ひとりに学ぶ「天才の仕事術」
Kindle版希望
『仕事術』というサブタイトルからすると若干肩透かしかもしれないが、「熱量と時間を費やさないと戦えない」=「熱量と時間をかければ戦える」という主張は普通のビジネスマンにとっても肝に銘じるべきことだと思う。
その先にセンスの善し悪しはあるにしても、「熱量と時間」をかけることで、十分に才能ある人たちと闘うことができるのです。
P117
『モヤさま』の伊藤P(伊藤隆行)との先輩後輩関係とか、徳光和夫に「フロアディレクターは佐久間くんじゃないと嫌だ」と言われるほど気に入られていた(P92)とか、ゴッドタンの企画名が〇〇選手権である理由(P102)とか、テレビ好き・『ゴッドタン』好きにはたまらないエピソードも満載。
ということで、ぜひとも読んでみていただきたい本なのだが、残念ながらAmazonやほかのネット通販には中古しかない。もう絶版なのかな?
中古(古本)は売ってる。
重版が無理ならKindle化してくれないものだろうか。Kindle版つくるのも大変なのかもしれないけど。
Kindle版には妹にけなされたという佐久間Pが描いた漫画を特典としてつけてほしいです。